セッション情報 パネルディスカッション11

IPMNの経過観察,治療のタイミングと予後

タイトル PD11-9:

IPMN長期経過観察例によるIPMN悪性化率及び残膵再発率の検討

演者 大野 栄三郎(名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部)
共同演者 廣岡 芳樹(名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部), 後藤 秀実(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学)
抄録 【目的】新IPMN診療ガイドライン(GL)における形態分類,切除適応因子に基づき,IPMN長期経過観察例,術後観察例における悪性化の頻度を検討する事.【対象と方法】2013年4月までに当科で診断したIPMN573例中,初回診断時GLにおけるHigh-risk stigmataを認めず,12か月以上経過観察を行った246例(術前群)及び外科的切除後12か月以上経過観察が可能であった204例(切除群).経過観察は6-12か月毎にCT/MRI/EUSにて行った.IPMN自然史を解明するため1)術前群のIPMN自体の悪性化,通常型膵癌の発生頻度2)切除群における再切除施行率,悪性化率,予後を検討した.【結果】1)術前群は男性135例,平均年齢64.6±9.6歳,観察期間中央値48.4か月(12-179か月).IPMN自体の悪性化を13例(5.3%)に認めた.5年悪性化率は5.0%,初回診断時形態をGLにおけるWorrisome features(WF)の有無にて比較すると,WF(+)17.4%:WF(-)2.3%(logrank p=0.0002)と有意差を認めた.通常型膵癌は7例(2.8%)に認め,5年発生率は2.0%であり,6例が分枝型,1例が混合型からの発癌であった.2)術後群は男性130例,平均年齢(手術時)66.0±8.9歳,観察期間中央値41.5か月(12-223か月)であり主にCTにて経過観察がなされた.初回切除の病理診断は腺腫:非浸潤癌:浸潤癌=99:46:59例.再発により13例(6.4%)に再切除が行われた.5年再手術率は3.1%,再手術までの期間中央値は41か月(13-160か月)再切除の病理診断は腺腫:非浸潤癌:浸潤癌=2:7:4例であった.13例中4例は初回切除時に残膵病変を認めない症例であった.また初回病理診断別の5年生存率は腺腫:非浸潤癌:浸潤癌=95.4%:94.4%:56.2%と浸潤癌にて有意に予後不良であった.【結語】IPMN術前経過観察例においてはIPMN自体の癌化,通常型膵癌の合併に留意が必要であり,新GLにおけるWFを有する症例はIPMN癌化のリスクである.術後群の結果よりIPMNは浸潤癌に至る前に切除を行うことで良好な予後が期待できると考えられた.
索引用語