セッション情報 ワークショップ1

アカラシアの治療戦略,治療の第一選択は

タイトル W1-1:

バルーン拡張術が有効なアカラシア症例の特徴

演者 岩切 勝彦(日本医科大学千葉北総病院消化器内科)
共同演者 川見 典之(日本医科大学消化器内科学), 坂本 長逸(日本医科大学消化器内科学)
抄録 【目的】バルーン拡張術(以下拡張術)が有効なアカラシア患者の特徴を明らかにする.【方法】対象は食道内圧,造影検査,内視鏡検査によりアカラシアと診断され,拡張術が施行された94例(男性46人,平均年齢52.4歳)である.拡張術はRigiflex社製の30mmバルーンを使用した.加圧の程度は加圧時の症状の程度をみながら変更したが,原則1回目の加圧は3psi,3分,その後1分間の休憩後2回目(4psi,3分),3回目(5psi,3分)を行った.患者背景,内圧,造影所見と拡張術の効果との関連を多変量解析にて検討した.拡張術の効果判定は嚥下困難と口腔内逆流の頻度をスコア化(症状ほぼなし:0点,時々:1点,毎日:2点)し,拡張1週後および6か月後に行った.総スコアが2点以下,総スコアが1点以上低下し,かつ各項目が1点以下となった状態を寛解とし,この状態が6ヶ月以上の持続したときに拡張術有効とした.1回目の拡張後,症状改善を認めるが寛解の判定に達しない場合には35mmバルーンを用い2回目の拡張術を施行,再度1週後に効果判定を行った.拡張術1週後に全く改善が得られない場合には拡張術無効と判定した.【成績】拡張術の有効例は69例(73.4%)であった.69例中の66例(95.7%)は1度目の拡張術で寛解に達した.有効例の平均年齢(56.9歳)は無効例(40.1歳)に比し有意に高齢であった.各年齢群の有効率は30歳未満では0%,30-39歳では47.1%,40-49歳では82.3%,50-59歳では85.0%,60-69歳では94.1%,70歳以上では87.5%であった.多変量解析では拡張の有効性に及ぼす因子は年齢のみであった.有効例65例中7例に再燃(平均31.6か月)を認めたが,再度の拡張術を希望した4例では拡張術が有効であった.計107回の拡張術の副作用として,食道破裂を1回認めたが,内科的保存治療により軽快した.また拡張後の逆流性食道炎を寛解例の69例中7例(軽症6例,重症1例)に認めた.【結論】40歳以上のアカラシア患者では拡張術は治療の第一選択となりうる治療法であると考えられた.
索引用語