セッション情報 ワークショップ1

アカラシアの治療戦略,治療の第一選択は

タイトル W1-4:

食道アカラシアの治療戦略―内視鏡的バルーン拡張術の有効性についての検討―

演者 中藤 流以(川崎医科大学消化管内科学)
共同演者 眞部 紀明(川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)), 春間 賢(川崎医科大学消化管内科学)
抄録 【目的】食道アカラシアにおけるバルーン拡張術の有効率と治療効果に影響を与える因子について検討する.【対象および方法】2006年1月から2013年9月に,当院で食道アカラシアと診断し,バルーン拡張術を施行した32例(男性8例,女性24例,平均年齢56.7±22.5才)を対象とした.食道アカラシアは,臨床症状,食道X線造影検査,上部消化管内視鏡検査および高解像度食道内圧検査(HRM)の結果により総合的に診断した.なお,食道アカラシアはHRMを用いたシカゴ分類に基づき,3型に分類した(Type I:19,Type II:12,Type III:1).全例,カルシウム拮抗薬の内服治療のみでは症状のコントロールが不良であったため,入院の上,内視鏡的バルーン拡張術を施行した.同治療には,Rigiflex Achalasia Balloon Dilator(ABD)(Boston Scientific Corp, Boston, Mass)(径30mm)を用い20psi×1分間の拡張を1.0±0.8回施行した.内視鏡的バルーン拡張術後,症状が消失し食道X線造影検査にてバリウムの通過が良好な事を確認した後,外来経過観察とし,嚥下困難・口腔内逆流などの症状再発を認めず,かつ食道X線造影検査においてもバリウムの停滞が認められない場合を治療効果ありとした.一方,症状の再発あるいは,食道X線造影検査にてバリウムの停滞が認められた場合には治療効果なしと定義した.【結果】平均観察期間51.6カ月における内視鏡的バルーン拡張術の有効率は65.6%(21/32)であった.また,治療効果に影響を与える因子として,病悩期間,治療前のLES静止圧,シカゴ分類による内圧分類が示された.なお,内視鏡的バルーン拡張術施行例のうち,1例(3.1%)に穿孔を認めたが,保存的治療で軽快した.【結論】病悩期間が長い症例,内視鏡的バルーン拡張術前のLES静止圧の低下した症例,シカゴ分類type IあるいはIIIの症例は,内視鏡的バルーン拡張術の奏功率が低く,外科治療を選択する指標の一つとなると考えられた.
索引用語