セッション情報 ワークショップ1

アカラシアの治療戦略,治療の第一選択は

タイトル W1-8:

食道アカラシアに対する腹腔鏡下Heller-Dor手術(LHD)の治療成績

演者 小村 伸朗(東京慈恵会医科大学消化管外科)
共同演者 矢野 文章(東京慈恵会医科大学消化管外科), 矢永 勝彦(東京慈恵会医科大学外科学講座)
抄録 【背景と目的】食道アカラシアに対する外科治療は,経口内視鏡的筋層切開術(POEM)とLHDに大別される.体表に傷が残らず,さらに長い筋層切開が可能であるため,POEMの手術件数は大幅に増加している.一方,LHDでは筋層切開後の胃食道逆流防止術の付加,さらに屈曲した食道を直線化できる利点がある.以上の観点からLHDの治療成績を検討した.【方法】1994年8月から2013年9月までにLHDの初回手術を施行した427人(平均44.9±15.0歳,女性206人)を対象とした.【成績】直線型360人,シグモイド型67人(進行シグモイド型15人を含む),平均最大横径は5.2±1.5 cmであった.手術死亡例はなく,平均手術時間は174±48(67-447)分,出血量は16±77(0-1,300)mlであった.術中偶発症は76人(17.8%)で,粘膜損傷が最多であり(65人),迷走神経損傷が5人,脾や小腸などの他臓器損傷,calibration用の食道ブジー挿入時の梨状窩損傷などが認められた.開腹移行,輸血施行はいずれも脾損傷の1人(0.2%)のみであった.手術後経過は安定しており,術後経口摂取開始日,術後在院日数の中央値はそれぞれ術後第1病日と第4病日であった.術後狭窄により7人(1.6%)に拡張術を施行した.拡張回数は全例1回のみであった.術後再発,食道裂孔ヘルニア,小腸穿孔,食道周囲膿瘍により4人(0.9%)に再手術を行った.アンケート評価で,手術の奏効率は94.6%であった.Timed barium esophagogramによる食道クリアランス評価では,シグモイド型の完全クリアランス率は36%と低かったが,奏効率は94.0%と良好であった.術後逆流性食道炎を36人(8.4%)に認めたが,全例プロトンポンプ阻害薬の投与によりコントロール可能であった.また,無投薬の患者は365人(85.5%)であった.【結論】LHDの奏効率は約95%,術後逆流性食道炎の発生率は約8%と良好な成績であった.
索引用語