セッション情報 ワークショップ1

アカラシアの治療戦略,治療の第一選択は

タイトル W1-10:

食道アカラシアに対する内視鏡的筋層切開術(POEM)―500例超の経験から―

演者 井上 晴洋(昭和大学江東豊洲病院消化器センター)
共同演者 工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)
抄録 【目的】食道アカラシアに対する標準治療は,バルーン拡張術および外科手術であろう.バルーン拡張術は,効果が一時的であり,また5%以下のリスクであるが,穿孔の報告がある.われわれは,Hellerの筋層切開を,内視鏡的に施行することを発案し,病院倫理委員会の承認のもとに実施した.【症例と適応】2008年9月8日に第一例を施行後,現在(2014年1月16日)までに541症例にPOEM(経口内視鏡的筋層切開術)を施行している.現在の適応は,すべてのアカラシア症例および狭窄性の食道運動機能障害である.【方法】POEMの基本術式として,中下部食道の0時から2時方向で胃の小彎につらなる10数cmの切開を置いている.術後症例では,食道の7時方向,胃の大湾での切開をおいている.その際には,横隔膜および筋肉のHis角が食道・胃接合部の指標となる.【成績】500例(2013年11月6日現在)での成績を提示する.3歳から87歳.男女比は171:229例.病悩期間10.9年.Straight type 448例,Sigmoid type 52例.外科術後症例13例.手術時間は平均で97.7分,切開長13.9cm(胃側2.8cm).重篤な合併症はなく,保存的に治癒可能であった偶発症は3.2%(気胸1例,粘膜下血腫3例,胃小網炎1例,粘膜損傷8例,術中輸血1例,胸膜炎・胸水2例)であった.平均在院日数は4.72日である.Resting pressureは28.8mmHgから13.2mmHgに改善(P=0.01),Eckerdt scoreは1年後で6.0から1.5に改善(P=0.01)している.POEMの奏効率は,治療後のEckerdt scoreが3以下を指標とした場合に94.7%,さらに術前の3以上低下したものを加えると97%であった.外科手術への移行例は一例もない.また術後のGERDは,GERD症状を有する者が15%,そのなかでPPIを内服したものが5%であり,保存的に治療可能であり,腹腔鏡のNissenなどを必要とされる方はおられない.【結語】POEM 500例の経験では,POEMはアカラシアおよび閉塞性の食道運動機能障害に対する標準治療であると考えている.
索引用語