セッション情報 ワークショップ2

FGIDの病態生理学と脳腸相関研究の進歩

タイトル W2-4:

機械刺激感受性のあるTRPV2イオンチャネルを欠損させたマウスの作出及び,その胃排出異常の検討

演者 三原 弘(富山大・3内科)
共同演者 鈴木 庸弘(富山大・3内科), 杉山 敏郎(富山大・3内科)
抄録 【背景/目的】我々は機械刺激感受性のあるTRPV2イオンチャネルが,マウスでは全消化管の抑制性運動神経に発現しており,胃では適応性弛緩,排出能に,小腸では移動に関与していることを報告してきた(Mihara et al. J Neurosci 2010 & Am J Physiol 2013).FGIDの病態へのTRPV2の機能異常の関与が推察されるが,固体レベルでのTRPV2イオンチャネルの機能解析を更に行うためには,TRPV2欠損マウスが必要不可欠である.そこで,全身TRPV2欠損マウスを作出し,固体実験を行うことを目的とした.【方法】TRPV2-loxPマウスと,EIIa-Creマウスを掛け合わせることで,全身TRPV2欠損マウスを作出した.作出したマウスの遺伝子型を確認し,遺伝子・蛋白発現の欠損をそれぞれRT-PCR法,免疫組織化学法で確認した.胃排出能はフェノールレッド法により検討した.【結果】TRPV2ヘテロ欠損マウス同士を掛け合わせた所,TRPV2ホモ欠損胎仔は周産期に全て死亡した.そこで,既報(Park et al. J Neurosci 2011)を参考に,異なるバックグラウンドのヘテロマウス同士を掛け合わせた所,TRPV2ホモ欠損マウスの作出に成功した.RT-PCR法にて,ホモ欠損マウスにおけるTRPV2遺伝子発現の欠損が確認された.免疫組織化学法にて,ホモ欠損マウスにおける胃,小腸の抑制性運動神経のTRPV2蛋白の欠損が確認された.ホモ欠損マウスは,同腹の野生型マウスに比べて,有意に胃排出能が低下していた.【結論】全身TRPV2ホモ欠損マウスの作出に成功した.消化管におけるTRPV2イオンチャネルの解析を行う上で有用なツールであると考えられた.
索引用語