セッション情報 ワークショップ2

FGIDの病態生理学と脳腸相関研究の進歩

タイトル W2-6:

内視鏡的メントール投与後の前庭部運動評価

演者 楠 裕明(川崎医科大学総合臨床医学)
共同演者 井上 和彦(川崎医科大学総合臨床医学), 春間 賢(川崎医科大学消化管内科)
抄録 近年,鎮痙剤を使用しない上部消化管内視鏡(内視鏡)検査が行われるようになり,検査開始後にメントールを散布することがある.今回われわれは,鎮痙剤を使用しない内視鏡施行中に観察された,いくつかの肉眼的所見を記録し,胃十二指腸運動機能の評価を試みた.また,散布チューブを用いて0.8%メントール(ミンクリア)を前庭部と十二指腸球部に散布し,前庭部収縮運動の変化を観察した.【対象】内視鏡検査を施行した12例(男性4例,女性8例)で,有症状患者はそのうち8例であった.【方法】検査前日から最低12時間の絶食の後,胃内に前投与薬を投与せず,鎮痙剤の注射も行わない状態で内視鏡検査を開始.胃内の詳細な観察の前に,近位胃の拡張,幽門輪の開閉,前庭部収縮の頻度と強さ,ヘルニアの有無,胃および十二指腸内の胆汁の存在などを観察記録した.その後,前庭部収縮が評価可能な位置に内視鏡を固定し,散布チューブでメントール液2mlを前庭部および十二指腸球部で散布し,それぞれ2分間収縮の変化を観察.それでも前庭部収縮が停止しない例は,残りのメントール液16mlを前庭部で散布した.運動機能評価後は,通常の検査(観察)を続行した.【結果】機能検査は通常の胃内の観察に大きな支障はなかったが,平均して約5分~6分の検査時間の延長がみられた.症状と関連があると思われる内視鏡的情報として,有意なものは指摘できなかった.メントール散布に対する反応では,胃内散布(2ml)で前庭部収縮が停止したのは3例のみであり,十二指腸投与で停止したのは2例,前庭部で残りの全量を投与した後に停止したのは2例であった.また,5例では全量投与後も前庭部収縮が停止しなかった.【考察】本研究はディスペプシア症状と関連する運動機能異常を明らかにする可能性がある.
索引用語