セッション情報 ワークショップ2

FGIDの病態生理学と脳腸相関研究の進歩

タイトル W2-8:

FGIDにおける小腸・大腸運動評価の意義

演者 洲崎 文男(横浜南共済病院消化器内科)
共同演者 濱中 潤(横浜南共済病院消化器内科), 三浦 雄輝(横浜南共済病院消化器内科)
抄録 【目的】我々は超音波法と画像解析を組み合わせて腸管運動を数値化する手法を考案した.まずCTボリュームナビゲーション機能を持つ超音波装置を用い,客観的に部位を同定して腸管運動を記録した.次いでParticle Imaging Velocimetryという手法で腸管運動をベクトル化し,乱流解析を行い乱流エネルギーから運動の強度を,渦度から運動の方向を評価した.この手法でFDおよびIBSにおける小腸・大腸の運動を評価したので報告する.
【対象と方法】既に腹部CT検査が行われていたFD12例(EPS5名,PDS7名),IBS7例(IBS-C4名,IBS-D3名)を対象とし,腹部症状のない6例を対照とした.超音波検査は食後4時間で行い,空腸・回腸・終末回腸・上行結腸・S状結腸を観察した.運動状態の安定した10秒間を選んで解析を行い,1.乱流エネルギーの平均値で運動の強度を評価,2.さらに自覚症状をGSRSで評価し相関を検討,3.渦度から振り子運動・蠕動運動の鑑別を試みた.
【結果】1.乱流エネルギー(mm2/msec2)の平均値は空腸・回腸・終末回腸・上行結腸・S状結腸でFD群:10.9, 7.7*, 12.7*, 4.4, 2.8, IBS群:5.8, 15.1, 13.4*, 1.8, 5.0*,対照群:3.5, 2.3, 2.6, 2.0, 1.5(*:P<0.05)であり,FD群では回腸,終末回腸で,IBS群では終末回腸,S状結腸で有意な運動亢進が示唆された.
2.相関係数で有意であったのは終末回腸の乱流エネルギーとFD群のGSRS総スコアー:0.49,および腹痛ドメイン:0.56,IBS群の下痢ドメイン:0.54,S状結腸の乱流エネルギーとIBS群の便秘ドメイン:-0.34,であった.
3.振り子運動は総計125部位中5部位と低頻度であった.
【結語】FD,IBS共に終末回腸を中心に運動亢進の可能性が示唆された.回腸の強い蠕動や回盲弁からの排出異常がFGIDの病態に関与していると考えられる.
索引用語