セッション情報 ワークショップ3

食道表在癌,早期胃癌に対する内視鏡診断治療の進歩

タイトル W3-4:

食道ESD後狭窄に対する治療戦略

演者 山口 直之(長崎大学病院光学医療診療部)
共同演者 磯本 一(長崎大学病院光学医療診療部), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 【目的】食道ESDは広範囲病変の一括切除を可能にしたが,広範囲剥離例では術後狭窄が高頻度に起こり,狭窄対策が問題となる.そこで術後狭窄に対するステロイド(SH)投与やオリジナルSH局注針Ntypeの有用性,また,東京女子医科大学と共同で施行した世界初の移送(長崎-東京)による口腔粘膜上皮細胞シート移植症例3例の術後経過を含め報告する.【対象・方法】2013年8月までに当科にてESDを施行した食道表在癌279症例387病変を対象とし,1)治療成績,2)術後狭窄に対するSHの有用性,3)細胞シート移植症例の術後経過を検討した.【結果】1)一括治癒切除率:92.5%,一括完全切除率:96.4%,穿孔率:0%,後出血率:0.5%,術後狭窄率:7.3%であった.2)経口群(62例)・局注群(51例)全体での比較では,狭窄率・拡張回数(中央値)は順に14.5%・0回,19.6%・0回であり,有意差を認めず,両群とも狭窄予防に有用であった.ただし,全周剥離例(19例)のみの検討では,経口群(15例)は狭窄率・拡張回数(平均値)が26.7%・1.5回であり,局注群(4例)の100%・12.8回に比べて有意に(p<0.05)狭窄率・拡張回数が少なかった.また,経口群においてSH投与に伴うCMV胃腸炎発症例を1例(1.7%)に認めた.局注群おいてSH局注による穿通(縦隔気腫)を1例(2.1%)に認めたが,局注針Ntype(1.8mm・25G)を開発・使用後は局注に伴う有害事象を認めていない.3)細胞シート移植を3症例に施行したが,移植に伴う有害事象はなく術後経過は良好である.【結論】食道ESDは安全かつ高い根治性が得られ食道においても有用である.広範囲剥離症例は,従来頻回の拡張術を必要としたが,SH経口投与・局注療法いずれも狭窄予防に有用であるが,全周剥離症例に対しては経口投与がより有用である.加えて,穿刺針NtypeはSHの安全な局注が可能となり,SH局注に伴う穿孔予防に有用である.しかし,経口投与例でCMV胃腸炎を1例(1.7%)認めており,SH使用に関しては感染症等に注意が必要である.また,細胞シート移植は,ESD後狭窄に有望な再生医療技術である.
索引用語