セッション情報 ワークショップ3

食道表在癌,早期胃癌に対する内視鏡診断治療の進歩

タイトル W3-5:

ESD術後偶発症に対する予防と対処―食道術後狭窄予防,胃遅発性穿孔及び術中巨大穿孔に対する内視鏡的組織被覆法

演者 滝本 見吾(武田総合病院消化器センター)
共同演者 玉置 大(武田総合病院消化器センター), 松山 希一(武田総合病院消化器センター)
抄録 食道表在癌,早期胃癌の標準的治療法となったESDであるが,遅発性穿孔,術中巨大穿孔に対する有効な対処法の報告は少ない.クリップ縫縮やOTSCシステムが有用との報告もあるが,遅発性穿孔部は筋層ごと脱落するため穿孔径が大きく,穿孔部周囲の筋層は脆弱であることから縫縮することは非常に困難である.また食道亜全周切除後の狭窄予防はトリアムシノロン局注が有用と報告されているが,全周性切除後に対する有用性は示されておらず,また同方法による遅発性穿孔発生の報告もある.今回我々は,上記術後偶発症の対処法として内視鏡的組織被覆法を用いた症例を経験したので報告する.
同方法で使用する処置具は,生検鉗子と散布チューブのみであり,使用する薬剤は,ポリグリコール酸(PGA)(ネオベール)とフィブリン接着剤(ベリプラストPコンビセット)である.ネオベールは,縫合吸収糸のシート状補強材であり,ベリプラストPコンビセットは加熱血液製剤で,血液の凝固作用を応用した生理的な組織接着剤である.同方法は,本邦において呼吸器外科手術,胆膵手術,脳外科手術等に広く使用されており,我々は十二指腸ESD後の遅発性穿孔予防に有用であることを報告してきた.また広範囲咽頭癌をELPSにて切除後に組織被覆法を用いれば瘢痕狭窄を来さないとの報告もある.
胃遅発性穿孔3例(穹窿部1例,体部後壁2例),胃術中巨大穿孔2例(残胃大弯1例,体部大弯1例),胃全摘後術後縫合不全による穿孔1例(吻合部巨大穿孔1例),食道バルーン拡張後巨大穿孔2例,食道全周切除後狭窄予防1例(下部食道約30mmの全周切除1例)に対して,我々は内視鏡的組織被覆法を施行し全例で外科手術を回避できた.少数例ではあるが,同方法は簡便かつ今後期待できる対処法と考えるため今回報告する.
索引用語