セッション情報 ワークショップ3

食道表在癌,早期胃癌に対する内視鏡診断治療の進歩

タイトル W3-9:

胃ESDの意義とその評価

演者 藤本 愛(慶應義塾大学腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門)
共同演者 浦岡 俊夫(慶應義塾大学腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門), 矢作 直久(慶應義塾大学腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門)
抄録 目的:ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の登場により,治療困難とされていた病変の多くが切除可能となった.また,手術症例の解析によるリンパ節転移リスクの解明により,内視鏡治療の適応拡大が進みつつある.ESDにより絶対適応病変では一括完全切除による治癒切除率が約98%とほぼ根治でき,さらに治療対象に多くの適応拡大病変や診断や局所コントロール目的の適応外病変も含まれるようになってきた.このような病変に対するESDの有益性を評価するため,有害事象を含めた治療成績を検討した.方法:対象は2010年6月から2013年5月に適応拡大または適応外病変として胃ESDを施行した,早期胃癌73名76病変.治療成績として一括切除率,一括完全切除率,治癒切除率,有害事象として穿孔,輸血を要する術中出血率,後出血,重篤な狭窄や誤嚥性肺炎,治療関連死の有無について検討した.結果:1.患者背景:適応拡大病変/適応外病変:46名49病変/27名27病変,男女比44:2/25:2,平均年齢68.3/68.4歳.2.治療成績:平均病変長径22.1±17.6/22.1±17.6mm 施行時間51.6±45.0/51.4±44.4分,一括切除率49/49(100.0%)/27/27(100.0%),一括完全切除率44/49(89.7%)/22/27(81.4%),治癒切除率35/49(71.4%)/4/27(14.8%).3.有害事象:穿孔2/76(2.6%),後出血8/76(10.5%),輸血を要する術中出血0/76(0.0%),拡張を必要とする狭窄や重篤な誤嚥性肺炎,死亡例は見られなかった.考察:胃ESDにより従来は内視鏡治療が困難であった病変も治療可能になってきた.今回解析した病変には,間置空腸を介在した残胃病変,残胃の縫合線上病変,穹窿部の巨大病変,病変の口側と肛門側に前治療による瘢痕を伴う症例も含まれていたが安全に治療し得た.これらの治療例ではやや後出血が多い傾向がみられたが,重篤な有害事象はみられず,十分な知識と技量をもっていれば安全な治療が可能と考えられた.結論:適応拡大病変や診断・局所コントロール目的の適応外病変に対するESDは十分にその目的を達成しており患者に対して有益であると考えられた.
索引用語