セッション情報 ワークショップ3

食道表在癌,早期胃癌に対する内視鏡診断治療の進歩

タイトル W3-12:

消化管全層切除の果たす役割と今後の展望

演者 比企 直樹(がん研有明病院消化器外科)
共同演者
抄録 上部消化器内視鏡診断の進歩によって,早期胃癌の割合は明らかに増加している.早期胃癌に対する機能温存胃切除はそのリンパ節転移頻度の少なさから腹腔鏡下手術などの低侵襲性手術との組み合わせで普及してきており,よりよい長期成績が報告されている.胃の全層局所切除は究極の機能温存胃切除であるが,技術的に正確な切除範囲で施行することは極めて難しい.われわれは,内視鏡と腹腔鏡による合同手術により,正確な切除線で過剰な胃切除を防ぐためにLaparoscopy endoscopy cooperative surgery(LECS)という概念を導入した.このClassical LECSは内腔突出型の胃粘膜下腫瘍に対して,内視鏡のESDテクニックにより切離線を決定して,腹腔鏡の超音波凝固切開装置を用いて全層切除を完遂するものであった.LECSにより胃の切離範囲を最小限することができる.特に胃内腔発育型の胃粘膜下腫瘍や,最近ではリンパ節転移の可能性のほとんどない早期胃癌に対して応用が考えられている.しかし,このClassical LECSは胃を開放するために,腫瘍が腹壁に接触したり,胃液が腹腔内にこぼれるという欠点がある.これらの欠点を打破するべくLECS関連手技であるNEWS(Non-Exposed Endoscopic Wall-inversion Surgery)やClean NET(Combination of laparoscopic and endoscopic approaches to neoplasia with non exposure technique)などの手技が開発されている.今後は腫瘍・細菌散布の可能性のないLECS関連手技によって,消化管全層切除の適応はさらに広がると思われる.
索引用語