セッション情報 ワークショップ4

消化器癌内視鏡外科手術の最先端

タイトル W4-1:

胸腔鏡下食道切除術における最新の手技の工夫

演者 竹内 裕也(慶應義塾大学外科)
共同演者 川久保 博文(慶應義塾大学外科), 北川 雄光(慶應義塾大学外科)
抄録 【背景】これまで教室では食道癌患者に対する胸腔鏡下食道切除術を約240例に施行してきたが,1)左側臥位-腹臥位Hybrid体位,2)胸部上部食道のDouble taping method,3)術前3D-CTとMRIによるsimulation & navigationを考案し,徹底した縦隔リンパ節郭清を安全に行えるよう工夫を重ねてきた.【手技】体位は左半腹臥位とし,手術台ローテーションにより左側臥位と腹臥位双方ができるようにすることで,緊急時開胸移行への対応も容易となっている.中下縦隔は重力+人工気胸により腹臥位の方が良好な術野を得ることができ,左側臥位よりも安全かつ徹底した中下縦隔リンパ節郭清が可能である.しかし上縦隔の術野は従来の左側臥位上縦隔郭清手技の方が容易であり適宜人工気胸も加えて施行している.上縦隔左側リンパ節郭清時には胸部上部食道を2本のテープで牽引,気管は牽引・ころがしを行い,気管左側の脂肪組織を左鎖骨下動脈腹側縁あるいは左総頸動脈が露出されるところまで背側に引き出すようにしている.また術前3D-CTとMRIにより左右気管支動脈・大動脈弓・肺動脈幹と胸管の描出を行い,安全で確実な上縦隔左側リンパ節郭清を行っている.通常左気管支動脈は温存,胸管は合併切除しており,進行癌では左上縦隔胸膜も極力切除し脂肪組織を残さないようにしている.両側反回神経周囲はエネルギーデバイスを用いずに鋭的切離を心掛け,106tbL,109L郭清においては肺動脈幹,左肺門を露出することを目標としている.【結果】これまで重篤な術中偶発症もなく安全に施行可能であった.Hybrid体位導入,術前3D-CT導入後で中下縦隔郭清リンパ節個数,106recL+106tbLリンパ節郭清個数がそれぞれ有意に増加した.本術式確立後は以前と比較して術後縦隔リンパ節再発が減少する傾向が認められた.【結語】体位,器具,手技の様々な工夫により安全かつ徹底した縦隔リンパ節郭清と胸腔内吻合術が可能であると考えられた.
索引用語