抄録 |
(目的)内視鏡手術支援ロボットは,従来の鏡視下手術の欠点を補完し局所操作性を向上し得る複数の特長を有する.胃癌に対する腹腔鏡下胃切除におけるロボット使用の有効性について臨床的検討を行った.(方法)2009年~2012年に手術的治療の適応とした胃癌患者全656例のうち,姑息的手術57例,全身状態不良に伴う縮小手術46例,重複癌2例,各術者の当該術式経験数10例以内に相当する25例を除外した526例を対象とした.自費診療によるロボット(da Vinci S HD)使用に同意した患者に対しロボット支援胃切除を(ロボット群),同意しなかった患者に対し従来法による腹腔鏡下胃切除を行い(従来法群),術後1か月間臨床経過を観察した.(結果)ロボット群は88例,従来法群は438例であった.ロボット群では手術時間(ロボット群vs.従来法群:381[200-858]分vs. 361[147-779]分,p=0.003),出血量(ロボット群vs.従来法群:46[1-935]mL vs. 34[0-1017]mL,p=0.026)が若干増加しリンパ節郭清範囲が広かった(ロボット群vs.従来法群:D1+:D2,36:52 vs. 231:207,p=0.043)が,合併症発症率(Clavien-Dindo分類Grade≧III,ロボット群vs.従来法群:2.3% vs. 11.4%,p=0.009),術後在院日数(ロボット群vs.従来法群:14[2-31]d vs. 15[8-136]d,p=0.021)は有意に減少した.合併症の内訳は,ロボット群で局所合併症(ロボット群vs.従来法群:1.1% vs. 9.8%,p=0.007)が有意に減少したが,全身合併症(ロボット群vs.従来法群:1.1% vs. 2.5%,p=0.376)は2群間に有意差を認めなかった.多変量解析による有意な合併症発症危険因子はロボットの非使用(OR[95% CI],6.174[1.454-26.224],p=0.014),胃全摘(OR[95% CI],4.670[2.503-8.713],p<0.001),D2リンパ節郭清(OR[95% CI],2.095[1.124-3.903],p=0.020)であった.(結語)胃癌に対するロボット支援胃切除は局所合併症を軽減し短期術後経過を改善し得る有望な低侵襲手技である可能性が示唆された. |