セッション情報 ワークショップ4

消化器癌内視鏡外科手術の最先端

タイトル W4-9:

肝細胞癌治療における完全腹腔鏡下肝切除術―肝機能不良例に対する適応,視野の特性と有利点,再切除と系統切除―

演者 守瀬 善一(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院一般消化器外科学講座)
共同演者 川瀬 仁(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院一般消化器外科学講座), 川辺 則彦(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院一般消化器外科学講座)
抄録 【目的】当科では現在肝細胞癌症例全例に腹腔鏡下肝切除術を適応している.この経験をもとに肝細胞癌治療における腹腔鏡下肝切除術の意義を検討する.【方法】完全腹腔鏡下肝切除術を施行した慢性肝障害併存肝細胞癌症例が41例であった.腫瘍個数1-4個,最大径1.1-7.8cm,ICG15分値20%超19例,40%超7例であった.術式は,外側区域を除く区域切除以上5例,外側区域切除2例,亜区域以下系統切除6例,非系統切除28例であった.10例が肝細胞癌前治療歴を有し,胆嚢摘出術以外の上腹部手術既往例が7例(肝切除3例,膵切除2例,脾臓摘出1例,総胆管結石切石1例)であった.【結果】全症例の手術時間は140-710(中央値288)分,出血量は少量-2400(50)ml,術後在院日数は8-254(15)日,初期に2例で開腹移行(出血,腫瘍局在確認不能による)を要し,GradeII以上の術後合併症を5例に認めた.一方,ICG15分値40%超の高度肝障害症例では,手術時間130-494(232)分,出血量少量-213(100)ml,術後在院日数11-21(17)日,開腹移行例はなく,術後合併症1例,他の症例と周術期経過に有意差を認めなかった.上腹部手術既往例においても他の症例と周術期経過に有意差を認めなかった.【結論】慢性肝障害併存肝細胞癌患者に対する完全腹腔鏡下肝切除術は,高度肝障害例に対して腹水貯留を抑制し,術後肝不全を回避する.癒着が少なく,癒着剥離後の狭いスペースでの視野確保操作が可能で繰り返し治療が容易となる.肝背側IVC周囲,横隔膜下後腹膜付着部付近などでの視野が良好でこの部位での小範囲切除に有利であると同時にIVC,主肝静脈の剥離露出に優れている.という利点を有している.一方,大きな腫瘍のハンドリング,腫瘍局在の同定を含めた俯瞰的な視野の確保に難があり,これらを体位の変換による術野の展開,術前画像シミュレーションとそれを用いた小区画系統切除の積極的導入などにより克服することを目指している.
索引用語