セッション情報 ワークショップ17(消化器病学会・肝臓学会合同)

遺伝性肝胆膵疾患の病態と治療

タイトル 肝W17-2:

当院で経験した遺伝性肝疾患の実態~同胞内発症した骨髄性プロトポルフィリン症の2例~

演者 本田 洋士(広島大病院・消化器・代謝内科)
共同演者 高橋 祥一(広島大病院・消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大病院・消化器・代謝内科)
抄録 【背景・目的】遺伝性肝疾患は稀な疾患であり,診断・治療に難渋することが多い.当院で経験した遺伝性肝疾患として,同胞内発症した骨髄性プロトポルフィリン症について報告する.【症例】症例1:40歳代・男性.幼少時より日光過敏症状あり肝障害指摘されるも経過観察. 1995年に他院にて皮膚生検で骨髄性プロトポルフィリン症と診断.1996年12月,全身倦怠感,腹痛,黄疸を認め当科入院。劇症肝不全への進行が危惧されたが,血漿交換を施行し軽快退院.以後当院外来通院していたが,2009年12月に同様の症状が再発悪化したため当科入院.糖液の補液と安静,疼痛コントロールを行うも黄疸の悪化を認めたため血漿交換を施行したが効果は一時的であった.進行する貧血とヘム中間代謝物の蓄積が増悪因子と推定し輸血を施行.血中遊離プロトポルフィリンと中間代謝産物の除去のため血漿交換を施行.黄疸の改善を認め退院、外来にて経過観察中. 症例2:30歳代・女性.幼少時より日光過敏症,全身倦怠感を自覚.1996年4月,兄(症例1)の診断を契機に当科受診し骨髄性プロトポルフィリン症と診断.以後症状なく無投薬で経過観察中.骨髄性プロトポルフィリン症はヘム合成系の最終酵素であるフェロケタラーゼ(FECH)が障害酵素である.症例1ではFECH遺伝子の1塩基欠失を確認.ポルフィリン代謝酵素の異常により骨髄で生成されたプロトポルフィリンが多臓器に蓄積することにより生じる.治療法は誘因除去,安静補液,βカロチンやコレスチラミン内服などがあり,血中プロトポルフィリン除去を目的に血漿交換も選択されるが確立された治療法はない.今回血漿交換とともに積極的に輸血を行うことによりプロトポルフィリンの産生を減らしたことが症状改善につながったと考えた. 【結語】遺伝性肝疾患の診断は発症より長期間経過したものが多く,診断に苦慮することも多い.原因不明の肝機能障害については遺伝性肝疾患も考慮し,診断後は家系内発症の可能性も考える事が重要と思われた.
索引用語 遺伝性肝疾患, プロトポルフィリン症