セッション情報 ワークショップ5

SSA/Pと発癌―診断学の到達点

タイトル W5-3:

SSA/Pに合併した大腸癌の臨床病理学的特徴

演者 藤井 茂彦(京都桂病院消化器センター消化器内科)
共同演者 日下 利広(京都桂病院消化器センター消化器内科), 山口 大介(京都桂病院消化器センター消化器内科)
抄録 【目的】SSA/Pは癌化のポテンシャルを有し,通常の大腸癌とは異なる発癌経路をもつ可能性があり注目されている.今回SSA/Pに合併した早期大腸癌の臨床病理学的特徴とその発育進展を明らかにすることを目的とした.
【方法】当センターにて2005年から2012年までの8年間に内視鏡的切除された早期大腸癌1233病変を再検鏡し,SSA/Pに合併した早期大腸癌と通常早期大腸癌との臨床病理学的特徴を比較検討した.またSSA/Pに合併した早期大腸癌の拡大内視鏡所見とhMLH1の発現を検討した.
【結果】SSA/Pに合併した早期大腸癌は12病変で全早期大腸癌の1.0%であった.これら12病変と通常早期大腸癌1221病変の臨床病理学的特徴を比較すると,平均年齢は65.2:65.9歳(NS),性別(男/女)は5/7:729/339(p<0.05),病変部位(左側大腸/右側大腸)は1/11:812/409(p<0.001),腫瘍径は19.4:15.6 mm(NS),肉眼型(隆起型/表面型)は3/9:807/414(p<0.01),組織型(tub1/tub2)は9/3:1143/74(p<0.05),深達度(M/SM)は9/3:1093/128(p=0.09)であった.CV染色拡大観察にて9病変で癌併存の診断が可能であり,癌部ではVI軽度不整pit,SSA/P部ではII型pitや開大したII型pitをみとめた.癌併存の診断ができなかった病変のうち1病変は粘液による観察不十分,2病変は微小癌であった.拡大NBI観察が施行された7病変はいずれも癌部で表面パターンと血管パターンの不整がみられ,さらに癌部では血管増生をみとめるのに対して周囲のSSA/P部では血管増生がないため,NBI観察で癌部のコントラストが強調された.hMLH1免疫染色では癌部において12病変中6例(50%)で陰性であった.
【結論】SSA/Pに合併した早期大腸癌は女性で右側大腸に多く,表面型でtub2が多くSM浸潤癌が多い傾向を示し通常大腸癌とは異なる臨床病理学的特徴を有した.拡大観察は癌併存の診断に有用であるが,SM浸潤癌や微小癌もあり注意深い観察が必要と思われた.半数に癌部のhMLH発現消失をみとめ,通常大腸癌とは異なる発育進展する病変が多いことが考えられた.
索引用語