セッション情報 ワークショップ5

SSA/Pと発癌―診断学の到達点

タイトル W5-6:

鋸歯状構造を有する大腸病変の画像強調観察および病理学的特徴所見の検討

演者 斎藤 彰一(東京慈恵会医科大学内視鏡科)
共同演者 池上 雅博(東京慈恵会医科大学病理学講座), 田尻 久雄(東京慈恵会医科大学消化器肝臓内科)
抄録 【目的】鋸歯状病変のNarrow Band Imaging(NBI)観察による内視鏡および病理組織学的特徴所見について検討した.【方法】NBI観察では赤色調に変化をきたす粘液付着(red cap sign)の有無,拡大観察にて血管拡張の有無とsurface patternについて検討した.併せて免疫組織染色でも検討を行った.【成績】NBI観察の検討(100病変)では,red cap signの陽性率はHPで60.0%,SSA/Pで93.5%,TSAで25.0%,S-Ca.で16.7%であった.red cap signのないものをHPとし,みられるものをSSA/PおよびTSAとした場合に感度は93.5%,特異度40.0%,正診率は74.6%であった.拡大観察による腺管開口部の形態では,間接的に観察される円形・卵円形に拡張した開口部が従来の星芒状の開口部のものと混在してみられるか否かで分けた.HPでは38.7%の症例でのみ拡張を認める一方で,SSAPでは85.1%の症例に拡張を認めた.TSAやS-Ca.では20%前後の症例でのみ拡張していた.通常の星芒状pitのみがみられる病変をHPとし,腺管開口部の著明な拡張所見を呈する病変をSSA/PおよびTSAとした場合に感度は80.4%,特異度72.0%,正診率は77.5%であった.MIB-1染色における増殖細胞の分布の検討ではHPで腺底部において有意である一方で,SSAPでは腺底部~中層部,TSAでは表層部まで増殖細胞の分布の偏移を認めた.またMLH-1染色による検討ではHP,TSAにおいて発現低下は認めない一方で,SSAPでは発現の低下を認めた.p53染色ではHP,SSAP,TSAで過剰発現は見られず,S-Ca.でsporadicに癌腺管で過剰発現を認めた.【結論】NBI観察ではHP,SSA/P,TSAの鑑別に有用と考えられた.特にred cap sign陽性および腺管開口部が拡張しているものではSSA/Pの可能性が示唆された.また組織学的検討では三者で増殖細胞の分布が異なり,MLH-1染色ではSSA/PとTSAで腫瘍発生が異なる経路をとることも示唆された.
索引用語