セッション情報 ワークショップ5

SSA/Pと発癌―診断学の到達点

タイトル W5-8:

Sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)及びcancer in SSA/Pの遺伝子異常の解析―メチレーションアレイ解析を含めて―

演者 藤野 泰輝(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部消化器内科学)
共同演者 高岡 遠(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部消化器内科学), 高山 哲治(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部消化器内科学)
抄録 <目的>近年,大腸癌の発生経路としてserrated polypsから発癌するserrated pathwayが注目されている.Serrated polypsの一つであるSessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)は,右側大腸に多く発生し,BRAF変異を高率に認め,しばしばCIMPマーカーであるMINTやp16などのメチル化を認める.右側大腸癌は,しばしばhMLH1のメチル化によりMSI陽性を呈することから,SSA/PはMSI陽性癌の前病変として注目されている.しかし,SSA/Pにおいてはごく限られた遺伝子のメチル化が調べられているに過ぎない.そこで,本研究ではSSA/P及びSSA/P併存癌を対象に,各種遺伝子異常を調べるとともに,メチレーションアレイ解析を行い,SSA/P-cancer sequenceの分子機序を検討した.<方法>対象はSSA/P 40症例及びSSA/P併存癌2症例である.SSA/Pの診断は八尾の診断基準に基づいて行った.BRAF,KRAS,MSIなどの遺伝子解析は常法により行い,メチレーションアレイによるメチル化遺伝子の網羅的解析はMIAMI法により行った.<結果>SSA/P及びSSA/P併存癌におけるBRAF変異の陽性率はそれぞれ80%(12/15),100%(2/2)と高率であった.一方,KRAS変異の陽性率はそれぞれ13.3%(2/15),0%(0/2)と低率であった.MSI解析では,SSA/Pは2例のMSI-L以外はいずれも陰性(MSS)であったのに対し,癌は1例のみ陽性(MSI-H)であった.MSI-Hの癌はhMLH1のメチル化を認め,MSSの癌はp53変異陽性であった.メチレーションアレイ解析では,SSA/Pは平均35.5±16.7個,SSA/P併存癌は226±61個にメチル化を認め,これらに共通するメチル化遺伝子も認められた.<結論>右側大腸ではBRAF変異とメチル化が蓄積してSSA/Pが形成され,メチル化の蓄積とhMLH1のメチル化またはp53の変異により癌に進展するSSA/P-Cancer sequenceが示唆された.
索引用語