セッション情報 ワークショップ5

SSA/Pと発癌―診断学の到達点

タイトル W5-9:

SSA/P由来の大腸癌症例におけるエピジェネティックな異常とmicroRNA発現の検討

演者 能正 勝彦(札幌医科大学消化器・免疫・リウマチ内科学講座)
共同演者 三上 雅史(JR札幌病院消化器科), 吉井 新二(NTT東日本札幌病院消化器科)
抄録 【目的】大腸癌の新たな発癌経路としてserrated pathwayが近年,注目されている.その前癌病変であるsessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)は高率にBRAF遺伝子変異を認め,右側結腸に多く発生することが明らかにされているが,その発癌メカニズムに関しては不明な点が多いのが現状である.よって今回,我々はSSA/PとSSA/P由来の大腸癌(早期癌)症例を対象にCpG island methylator phenotype(CIMP)statusを含めたエピジェネティックな異常の検討を行った.【方法】対象はSSA/P 118例,SSA/P由来大腸癌10例の臨床検体でそれらの臨床病理学的特徴とMLH1メチル化,マイクロサテライト不安定性(MSI),LINE-1メチル化レベルを解析.またCACNA1G,CDKN2A,IGF2,RUNX3の4つのCIMPマーカーにおいて3つ以上でメチル化を示す病変をCIMP陽性と定義して検討を行った.【成績】MLH1メチル化はSSA/P(10%,12/118),SSA/P由来大腸癌(70%,7/10),MSIはSSA/P(1.0%,1/118),SSA/P由来大腸癌(40%,4/10)でいずれも有意差を認めた(P<0.0001).またLINE-1のメチル化レベルはSSA/P(58.1±5.4%),SSA/P由来大腸癌(58.3±8.4%)で有意差を認めなかった.一方,CIMP陽性例はSSA/P(37%,44/118),SSA/P由来大腸癌(100%,10/10)で有意差(P<0.0001)を認めた.【結論】SSA/P由来の大腸癌は全例CIMP陽性例で,MLH1のメチル化によるマイクロサテライト不安定性を示す症例も多かったことから,エピジェネティックな異常がSSA/Pの癌化において重要な役割を果たす可能性が示唆された.現在,我々は新規バイオマーカーとして注目されているmicroRNAについてもserrated pathwayの癌化に関わる発現異常について検討を進めており,その解析結果についても合わせて報告する.
索引用語