セッション情報 |
ワークショップ6
腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―
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タイトル |
W6-1:小腸生検検体を用いたクローン病病態解析
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演者 |
林 亮平(東京医科歯科大学消化器病態学) |
共同演者 |
土屋 輝一郎(東京医科歯科大学消化管先端治療学), 渡辺 守(東京医科歯科大学消化器病態学) |
抄録 |
【背景・目的】近年,カプセル内視鏡・バルーン内視鏡を用いた全小腸の観察が可能となったが,小腸疾患の病態に関する解析は進んでいない.小腸に病変を来すクローン病は生検診断率が低く確定診断に苦慮することが少なくない.欧米ではゲノムワイド関連解析により疾患感受性遺伝子が同定されたが,本邦では合致しないことから疾患感受性遺伝子に依存しない病態の存在が予想される.そこで我々は小腸粘膜を直接解析することがクローン病疾患の本態を反映していると考えた.本研究では小腸全長のマッピング生検によりクローン病特異的な形質発現を同定し,マウス初代培養細胞を用いた機能解析から病態理解をすることを目的とする.【方法】クローン病と健常者1例ずつからバルーン内視鏡によるマッピング生検を施行し,小腸の部位別遺伝子発現をマイクロアレイにて比較検討する.またクローン病と健常者4例ずつの生検検体を用いて,腸管上皮の分化制御因子および形質遺伝子に関する発現差異を検討する.さらにSato法によるマウス小腸初代培養を用いて上皮細胞形質と自然免疫応答の関連を解析する.【結果】全小腸マッピングにおける網羅的発現遺伝子の検討では,クローン病において病変の有無に関係なく回腸側での炎症関連遺伝子の上昇を認めた.一方,空腸ではクローン病で分化制御遺伝子および分泌形質の発現低下を認めた.マウス小腸初代培養では基底側にTLR5が局在しフラジェリン添加を行うと,マイクロアレイにて免疫応答遺伝子の発現誘導を認め,免疫染色にてNFκBシグナル亢進細胞を確認した.さらにNotchシグナル阻害剤により分泌系細胞を誘導するとフラジェリンによる応答促進を認めたことから,クローン病における分泌細胞減少は自然免疫応答低下をきたすことが示唆された.【結論】クローン病小腸粘膜では上皮細胞分化が抑制され,腸内細菌による自然免疫応答低下からバリアー能不全に陥ることが示唆された. |
索引用語 |
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