セッション情報 |
ワークショップ6
腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―
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タイトル |
W6-2:Vitamin Aの腸粘膜バリアー機能に及ぼす影響
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演者 |
平賀 寛人(弘前大学消化器血液内科学講座) |
共同演者 |
石黒 陽(国立病院機構弘前病院消化器血液内科), 福田 眞作(弘前大学消化器血液内科学講座) |
抄録 |
【目的】食による消化管の生理機能維持機構の解明は,健康増進目的のみならず,炎症性腸疾患の病態解明においても重要である.脂溶性ビタミンであるVitamin Aは腸管免疫維持に不可欠な役割を果たしており,今回我々は粘膜バリアーにおける機能調節の分子機構を明らかにし,Vitamin A及び脂肪摂取の意義を示すことを目的とした.【方法】Vitamin A欠乏(Vitamin A-deficient:VAD)マウスにおけるDSS(dextran-sodium-sulfate)誘発腸炎とSalmonella typhimurium経口感染モデル腸炎を用いて,VADが粘膜透過性に与える影響を検討した.VADマウスは妊娠中の雌をVitamin A欠乏食で飼育,新生マウスにも10週齢まで欠乏食を継続して作製した.【結果】VAD C57BL/6マウスでは,VAS(Vitamin A-sufficient)マウスと比較して有意な生存率の低下・体重減少・腸管長の短縮,病理組織学的にも高度な粘膜障害を認め,DSS腸炎に対する抵抗性が減弱していた.T・B細胞欠損したSCIDマウスにおいても,VADマウスではDSS腸炎・Salmonella typhimurium経口感染モデルのいずれに対しても抵抗性が減弱しており,これらの機序にはT・B細胞いずれも関与していないものと考えられた.また,VADマウスの粘膜透過性を評価する目的でFITC標識したdextranを経口摂取させた2時間後の血清中FITCを測定したところ,VADマウスで有意な増加を認めた.さらに,DSS誘発腸炎においてVAD SCIDマウスでは腸管上皮アポトーシスの増加,タイト結合構成蛋白質であるZO-1・Occludin-1の発現低下が認められた.【結論】今回の検討により,VADによる実験腸炎増悪の機序として,Cellular・Paracellular両面における粘膜透過性の亢進が寄与することが示唆された.消化管の恒常性維持,特に腸粘膜バリアー機能においてVitamin Aが重要な役割を果たしていることが明らかとなった. |
索引用語 |
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