セッション情報 ワークショップ6

腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―

タイトル W6-3:

ヒト腸管粘膜固有層におけるCD14陽性CD163low細胞の解析

演者 西村 潤一(大阪大学消化器外科)
共同演者 土岐 祐一郎(大阪大学消化器外科), 森 正樹(大阪大学消化器外科)
抄録 【目的】近年,Th17細胞が炎症性腸疾患に代表される自己免疫疾患の病因と深くかかわることが明らかになっている.マウス腸管においてTh17細胞の誘導や炎症抑制に関わる自然免疫系細胞の報告は多くあるが,ヒト腸管における自然免疫系細胞の役割は解析途上である.ヒト腸管におけるTh17細胞を誘導する自然免疫系細胞を同定し,機能解析することを目的とした.【方法】大腸癌手術症例の切除検体より非癌部を採取しこれを正常腸管として,酵素処理により単離したのちに抗CD3,CD11c,CD14,CD19,CD20,CD56,CD163抗体を用いてFACSにて解析した.FACSによりsortされた細胞のmRNAによる発現解析を行った.また血液から精製したナイーブT細胞と共培養することによりT細胞の分化誘導能を解析した.これらの解析をクローン病手術症例の切除検体を炎症部,非炎症部に分けておこなった.【結果】HLA-DR陽性細胞をCD14,CD11c,CD163を用いることで4集団に分離できた.そのCD14陽性CD163lowの細胞集団はIL-6,IL23p19,TNFなどの炎症性サイトカインを産生していた.ナイーブT細胞と共培養した結果,Th17細胞の誘導能を認めた.クローン病症例の炎症部,非炎症部にもCD14陽性CD163low細胞を認めたが,正常腸管と比較してIL-6,IL-23p19,TNF,IL-12p35などの発現が亢進していた.また,クローン病症例の非炎症部のCD14陽性CD163low細胞のIL-10の発現は正常腸管と比較して低下していた.クローン病腸管の炎症部,非炎症部ともにCD14陽性CD163low細胞のTh17細胞誘導能は著明に亢進していた.【結論】CD14陽性CD163low細胞はTh17細胞の誘導能を有し,クローン病症例において著明に亢進していることが分かった.今後,これらの細胞の簡便な同定包や制御包が開発されることによりクローン病の効果的な診断および治療につながることが期待される.
索引用語