セッション情報 ワークショップ6

腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―

タイトル W6-4:

炎症性腸疾患におけるmucin1の機能解析

演者 西田 淳史(滋賀医科大学消化器内科)
共同演者 安藤 朗(滋賀医科大学大学院免疫調節部門), 溝口 充志(マサチューセッツ総合病院)
抄録 【目的】Bacterial productであるATPや,segmented filamentous bacteriaなどが腸炎においてTh17細胞を誘導することなど,炎症性腸疾患における腸内細菌の働きが解明されてきている.一方,宿主側のメカニズムについては明らかになっていない.【方法と結果】Interleukin(IL-)22は様々な細胞から誘導される.このIL-22が大腸上皮に作用し,STAT3が活性化され,mucin1(MUC1)を誘導することが報告されている.そこでMUC1の腸炎への影響を検討する.Th2腸炎におけるMUC1の働きを検討するため,MUC1×TCRα double knock out mouseを作成した.MUC1×TCRα double knock out mouseの大腸では,近年報告されているLin-cKit-Thy1+Sca1+ innate lymphoid cellが増加しており,cytokine profileがTh2優位からTh17優位へと変化していた.in vitroの検討では,MUC1欠損によってTCRα KO mouseと比較してIL-17産生CD4+ T細胞の有意な増加を認めた.さらに,MUC1×TCRα double KO mouseでは,TCRα KO mouseと比較して腸炎が有意に増悪していた.TCRα KO mouseでは,大腸炎はクリプトの伸張を特徴とする粘膜層に限局した炎症が特徴であるが,MUC1×TCRα double KO mouseでは深部への炎症細胞浸潤が認められた.抗生剤投与によって腸内細菌を除去したところ,MUC1×TCRα double KO mouseでは非投与群と比較して大腸におけるIL-17産生innate lymphoid cellとIL-17産生CD4+ T細胞の著明な減少を認めた.MUC1はTh1腸炎モデルであるIL-10 KO mouseで重要な役割を果たしていることが報告されていることから,ナイーブCD4+T細胞をRAG KO mouseに輸注することで惹起されるTh1腸炎のCD45RB腸炎モデルを用いてMUC1の働きを検討した.MUC1×RGA1 double KO mouseでは大腸でTh17応答が増強され,腸炎自体も対象群と比較して有意に悪化していた.【結論】MUC1は腸炎におけるTh17応答調節において重要な役割を果たしており,Th1およびTh2腸炎の抑制に寄与していると考えられた.
索引用語