セッション情報 |
ワークショップ6
腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―
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タイトル |
W6-5:NFIL3欠損マウスにおける自然発症腸炎の免疫学的発症機序
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演者 |
小林 拓(北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター) |
共同演者 |
松岡 克善(慶應義塾大学消化器内科), Plevy Scott(ノースカロライナ大学消化器内科) |
抄録 |
【背景】NFIL3(nuclear factor,IL-3 regulated)は多様な免疫学的機能を持った転写因子である.ミエロイド系細胞において,NFIL3はIL-10によって誘導され,IL-12p40の抑制因子であることが見出された(Kobayashi T et al. J Immunol 2010).NFIL3はヒト炎症性腸疾患の感受性遺伝子のひとつであることも最近新たに報告された(Jostins L et al. Nature 2012).今回我々はNFIL3欠損マウスが腸炎を自然発症することを見出したため,その機序についての免疫学的検討を加えて報告する.【方法と結果】NFIL3欠損マウスは約半数が週齢を重ねるにしたがってTh1/Th17型の大腸炎を発症した.NFIL3とIL-10の二重欠損マウスは非常に早期から重症の腸炎をきたすことからNFIL3とIL-10はindependentに腸管免疫恒常性を制御していることが示唆された.NFIL3/RAG1二重欠損マウス(NRDKO)は腸炎を発症しないことから,リンパ球が腸炎の発症に必要であることが示された.しかしながらNRDKOマウスに野生型CD4+T細胞を移入しても腸炎を発症することから,腸炎の発症には自然免疫細胞でNFIL3が欠損していることが必須であることが分かった.さらに腸炎はNFIL3/IL-12p40の二重欠損マウスでは起きないため,ミエロイド系細胞からのIL-12p40の増加が発症に重要な役割を果たしていると考えられた.無菌のNFIL3欠損マウスでは腸炎を起こさなかった.【結論】NFIL3はIL-10非依存的に腸管免疫恒常性を維持する因子であり,NFIL3欠損マウスでは腸内細菌に反応してミエロイド系細胞から産生されるIL-12p40の制御が破綻し腸炎を発症する.NFIL3はあらたに感受性遺伝子であることが判明したことからも,ヒト炎症性腸疾患の発症機序を探るうえで非常に重要な因子と考えられる. |
索引用語 |
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