セッション情報 ワークショップ6

腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―

タイトル W6-6:

消化管マクロファージのサイトカイン産生における腸内環境の影響

演者 栗原 千枝(防衛医科大学校内科学)
共同演者 穂苅 量太(防衛医科大学校内科学), 三浦 総一郎(防衛医科大学校)
抄録 【目的】クローン病では,罹患臓器により治療反応性が異なることが知られるが,その理由は明らかではない.その病態にマクロファージ(Mφ)などの自然免疫を司る免疫細胞が主要な働きをしていることが知られるが,Mφは分化する環境により炎症性,抗炎症性などその機能が変化する.消化管においては腸内環境がMφの反応性に大きく影響を与えると考えられ,罹患臓器の違いによる疾患特性を規定する因子である可能性がある.我々は,腸内環境の違いを特に腸内細菌と脂肪酸の有無に焦点を当て,Mφのサイトカイン産生への影響を検討した.【方法】C57BL/6マウスの小腸および大腸の粘膜固有層よりCD11b陽性細胞を単離した.またマウス骨髄から同様に単離したCD11b陽性細胞を,GM-CSF存在下でMφに分化させた.刺激には,飽和脂肪酸としてラウリン酸,ω-3不飽和脂肪酸としてドコサヘキサエン酸(DHA),および煮沸したマウス腸管内容物を用い,サイトカインおよびTLRシグナル関連因子のmRNAを定量PCRにて調べた.【成績】骨髄由来のGM型Mφは,腸管内容物非存在下でラウリン酸の添加によりIL-6 mRNAの発現増加が観察され,小腸Mφも同様にラウリン酸の刺激でIL-6 mRNAの発現が増加した.腸管内容物存在下では,GM型Mφにおいてラウリン酸の添加によるIL-6 mRNAの発現変化は見られず,大腸Mφも同様にラウリン酸の刺激に低反応性であった.一方,DHAによる刺激は,腸管内容物非存在下のGM型MφではIL-6 mRNA発現に変化はなく,これは小腸Mφでも同様であった.腸管内容物存在下のGM型MφではDHAの添加によりIL-6 mRNAの発現低下が観察され,大腸Mφも同様にIL-6 mRNA発現が低下した.【結論】消化管は小腸と大腸で腸内環境が大きく異なるが,消化管Mφもそれに伴いサイトカイン産生能が異なった.更に,脂肪酸の様な食事因子に対する反応性も異なり,その際には腸内細菌の有無の影響が大きく寄与していると考えられた.
索引用語