セッション情報 ワークショップ6

腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―

タイトル W6-7:

制御性B細胞による腸管免疫の機能維持とその破綻による腸炎発症機序の検討

演者 岡 明彦(島根大学内科学講座第二)
共同演者 石原 俊治(島根大学内科学講座第二), 木下 芳一(島根大学内科学講座第二)
抄録 【目的】腸管免における制御性B細胞(IL-10産生性Breg)の機能は十分に明らかにされていない.これまでに我々は,クローン病(CD)モデルマウス(SAMP1)の病態にBregの機能異常が関連する可能性を報告してきた.今回は,マウスモデルとCD患者サンプルを用いたその後の検討から得られた結果を治療応用も踏まえて報告する.【方法と結果】<マウス>1.腸管B細胞のIL-10産生と細胞表面マーカーの解析によって,マウスBregはCD19(high)CD1d(high)分画に存在していた.2.SAMP1のCD4(+)T細胞をSCIDマウスに移入した腸炎モデルにCD19(+)B細胞を共移入した系を樹立した.このモデルにCD19(high)CD1d(high)分画(Breg)を除去したB細胞を共移入すると腸炎の増悪が認められた.3.Bregの抗炎症効果は,制御性T細胞の機能に非依存的であり,マクロファージやCD4(+)CD25(-)T細胞のサイトカイン産生の抑制と相関した.<ヒト>CD19(high)CD1d(high)分画のB細胞がIL-10を豊富に産生したが,さらにヒトではCD24(high)CD38(high)のサブセットがより顕著にBregを規定していた.CD患者では,いずれのBreg分画も減少しており,CpG DNA刺激によるIL-10産生が低値であった.<治療実験>アポトーシスを誘導したマウス胸腺細胞を腸炎モデルに投与すると腸炎が抑性された.その抑制効果は,上記のCD19(+)B細胞を共移入した腸炎モデルでより顕著なことから,アポトーシス細胞による腸炎抑制効果はB細胞の炎症抑制機能に依存していることが明らかとなった.【結論】IL-10産生性B細胞はマクロファージやT細胞の機能を介して腸管免疫を制御しており,その破綻は腸炎の発症や増悪につながる.生体におけるアポトーシス細胞の処理機構がB細胞を介した腸管免疫制御に関連する可能性が示唆された.
索引用語