セッション情報 ワークショップ6

腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―

タイトル W6-8:

炎症性腸疾患に対する炭酸脱水酵素1を治療標的抗原とした経口免疫寛容療法の開発

演者 八木 専(愛媛大学大学院消化器・内分泌・代謝内科学)
共同演者 阿部 雅則(愛媛大学大学院消化器・内分泌・代謝内科学), 日浅 陽一(愛媛大学大学院消化器・内分泌・代謝内科学)
抄録 【目的】経口免疫寛容療法は炎症性疾患や自己免疫性疾患の治療に応用できる可能性が示唆されている.演者らは炎症性腸疾患への関与が想定されているcecal bacterial antigen(CBA)についてプロテオーム解析を行い炎症性腸疾患の主要抗原として炭酸脱水素酵素1(CA1)を同定した.また,CA1の経口投与によりCD4+CD25-T細胞移入SCIDマウス腸炎モデルで抗原特異的に腸炎を抑制する効果があることを報告した.今回その腸炎抑制機序について解析することを目的とした.【方法】7週齢のSCIDマウスに5日間連続0.3mg/日のCA1またはPBS,KLH(コントロール群)を経口投与し投与終了2日後に腸炎を誘発させた.腸炎誘発4週目における腸管および腸管膜リンパ節の1)サイトカイン(IL-6,TNF-α,IL-17A,IL-10,TGF-β),RORγt,レチノイン酸の産生に必要なALDH1a2のmRNA発現をRT-PCRで,培養上清中サイトカイン濃度をELISAで測定した.2)CD103陽性樹状細胞,Foxp3陽性制御性T細胞をフローサイトメトリーで解析した.DSS腸炎モデルでの腸炎抑制効果についても解析した.【結果】1)CA1投与群ではコントロール群に比し,腸管および腸間膜リンパ節のIL-6,TNF-α,RORγt,IL-17A発現とIL-6,TNF-α,IL-17A産生が有意に低下していた.一方,CA1投与群ではALDH1a2の発現とTGF-β産生が有意に増加していた.2)CA1投与群での腸管および腸間膜リンパ節では,コントロール群に比しCD103陽性樹状細胞,Foxp3陽性制御性T細胞の割合が有意に増加していた.DSS腸炎マウスモデルもCA1経口投与により腸炎が有意に抑制された.【結論】CA1経口投与により腸管においてCD103陽性樹状細胞が制御性T細胞を誘導し,Th17細胞への分化を抑制していることが想定された.CA1はDSS腸炎モデルマウスでも腸炎を抑制することから,CA1による経口免疫寛容療法が炎症性腸疾患に対する新しい治療法となる可能性が示唆された.
索引用語