セッション情報 ワークショップ6

腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―

タイトル W6-9:

炎症性腸疾患患者腸内で低下するFusicatenibacter saccharivoransによるIL-10産生誘導能についての検討

演者 竹下 梢(慶應義塾大学消化器内科)
共同演者 松岡 克善(慶應義塾大学消化器内科), 金井 隆典(慶應義塾大学消化器内科)
抄録 【背景】近年,腸内細菌が炎症性腸疾患(IBD)の発症や病態への関与を示唆する研究が相次いで報告されている.IBD患者ではClostridium coccoides groupが減少しているなど,特定の細菌について疫学的挙動は明らかになってきているが,各菌種がIBDの病態に与える影響については未だ不明な点が多い.今回我々は,活動期IBD患者腸内細菌叢で偏性嫌気性グラム陽性桿菌であるFusicatenibacter saccharivorans(FS)が減少していることを見いだし,FSの腸炎に対する免疫学的影響について検討した.【方法・結果】当院IBD患者と健常者の便検体を用いて16s rRNA系統解析法で腸内細菌叢を解析したところ,IBD患者でのFSの減少を認めた.また,潰瘍性大腸炎(UC)患者において,活動期患者では寛解導入後にFSの増加を認めた.そこで,UC患者大腸手術検体の腸粘膜固有層単核球(LPMC)を各種細菌と共培養し,上清中のサイトカインを測定したところ,FSではEnterococcus faecalisと比較して有意にIL-10産生亢進を認め,FSの抗炎症効果が示唆された.FSの腸炎抑制効果を検討するため,Dextran sulface sodium腸炎マウスにFSを投与したところ,腸炎の抑制効果を認めた.【結語】IBD患者の活動期で減少しているF. saccharivoransは,大腸LPMCからのIL-10産生の誘導を介して腸炎抑制効果を示すことが示唆され,今後新規治療薬開発につながると考えられる.
索引用語