セッション情報 ワークショップ6

腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―

タイトル W6-10:

腸管内の短鎖脂肪酸はGPR43を介して単核球からのサイトカイン産生を制御し腸炎を抑制する

演者 野田 久嗣(愛知医科大学消化器内科消化管部門)
共同演者 佐々木 誠人(愛知医科大学消化器内科消化管部門), 春日井 邦夫(愛知医科大学消化器内科消化管部門)
抄録 【背景】腸内細菌により産生される短鎖脂肪酸は腸管免疫を促進するとされるが,そのメカニズムは明らかでない.近年,短鎖脂肪酸の受容体(G protein-coupled receptor(GPR)41,GPR43)が同定され,細胞表面に存在するGPRを介した作用機序が注目されている.【目的】短鎖脂肪酸がGPR43を介して腸管免疫をどのように制御するか明らかにする.【方法】GPR43 knock out(-/-)マウスとその野生型マウスに,dextran sulfate sodium(DSS)腸炎を惹起し,腸管免疫(サイトカインレベル)ならびに,単核球のサイトカイン産生に関して検討した.【成績】GPR43-/-マウスと野生型マウスの腸内細菌叢には差を認めなかったが,DSS投与によりGPR43-/-マウスでは腸炎の有意な悪化(体重減少,腸炎のdisease activity index(DAI;体重減少,血便,便の性状の合計スコア)の増加,ヘマトクリット減少,腸管の短縮,組織学的炎症の増悪)を認めた.GPR43-/-マウスの大腸粘膜におけるTNF-α,IL17の発現は,野生型マウスと比較し有意に増加していたが,IL-10には差を認めなかった.酢酸(150mM)経口投与により,野生型マウスにおいては腸管のTNF-α,IL17が減少し腸炎は改善したが,GRP43-/-マウスでは変化がなかった.GPR43-/-マウスにおいては,リポポリサッカライド(LPS)による単核球からのTNF-α産生が野生型にくらべ有意に増強していた.酢酸は単核球からのTNF-αの産生を抑制したが,この効果はGPR43抗体によりほぼ完全に(90.3%)ブロックされた.酢酸はGPR43-/-の単核球からのTNF-α産生を軽度抑制(34.1%)したが,この効果はGPR43抗体でブロックされなかった.【結論】腸内細菌によって産生される短鎖脂肪酸はその受容体(GPR43)を介して,免疫を制御することで腸炎を抑制すると考えられた.
索引用語