セッション情報 ワークショップ6

腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―

タイトル W6-11:

Lactbacillus brevisはCD103+樹状細胞分化制御を介して腸管炎症を抑制する

演者 高木 智久(京都府立医科大学消化器内科)
共同演者 福家 暢夫(カゴメ株式会社研究開発本部), 内藤 裕二(京都府立医科大学消化器内科)
抄録 【背景】腸管関連リンパ組織に特徴的に存在する樹状細胞として同定されたCD103+樹状細胞は,TGF-β産生を介して制御性T細胞を誘導し,免疫応答抑制性に作用することが知られている.一方,CD103-樹状細胞は,抗原刺激応答性に炎症性サイトカインを産生し,炎症促進性に作用するため,腸管炎症制御にはCD103+/CD103-樹状細胞バランスが重要である.本研究では,CD103+/CD103-樹状細胞バランスの制御機能を有する乳酸菌の探索を行い,マウス実験腸炎を用いて候補乳酸菌による腸炎抑制効果を検証した.【方法】ヒト単球様細胞株KG-1細胞を用いて樹状細胞分化誘導を行い,候補乳酸菌16株を用いてCD103+細胞誘導効率が良好な乳酸菌株を探索し,CD103+細胞誘導にかかわる分子機構を検討した.さらに,7週齢雄性C57BL/6マウスを用いてtrinitrobenzensulfonic acid(TNBS)腸炎を作成し,同定された候補乳酸菌株による腸炎治療効果を検証した.【結果】ヒト単球様細胞株KG-1細胞を用いた樹状細胞分化誘導の結果,伝統的京漬け物「すぐき」より単離されたLactobacillus brevis(KB290)がレチノイン酸存在下に効率的にCD103+細胞比率を上昇させることが明らかとなった.このCD103+細胞比率の上昇には,CD103+細胞の増加とpyloptosisによるCD103-細胞減少が関わっており,レチノイン酸受容体とTLR2/4を介した分子機構が関与していた.また,KB290の投与によりマウスTNBS腸炎の発症・進展は有意に抑制された.【結論】CD103+/CD103-樹状細胞バランスを制御することが腸管炎症抑制につながる可能性が示された.特に,Lactobacillus brevisが効率的にCD103+樹状細胞を誘導することが示され,腸管炎症制御を目指したProbioticsとしての有用性が期待された.
索引用語