セッション情報 |
ワークショップ6
腸疾患病態研究の進歩―免疫と腸内環境―
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タイトル |
W6-12:潰瘍性大腸炎に対する抗菌薬多剤併用療法の治療効果と粘膜細菌叢の変化
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演者 |
大草 敏史(東京慈恵会医科大学附属柏病院消化器・肝臓内科) |
共同演者 |
小井戸 繁雄(東京慈恵会医科大学附属柏病院消化器・肝臓内科), 田尻 久雄(東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科) |
抄録 |
【目的】潰瘍性大腸炎(UC)をはじめ炎症性腸疾患の原因として腸内細菌が注目されてきている.われわれはUCの原因の1つとしてFusobacterium varium(F.varium)に注目し,このF.variumを標的とした抗菌薬多剤併用療法(ATM療法)の二重盲検試験を実施し,その有効性について報告してきた.今回,ATM群と偽薬投与群における治療前後の大腸粘膜細菌叢の分析を行い,ATM療法の有効性との関連を検討したので報告する.【方法】二重盲検試験で得られた20例(ATM12例,偽薬群8例)の大腸粘膜の細菌DNAを採取しTerminal Restriction Fragment Length Polymorphism Analysis(TRFLP)法にてプロファイルの変動を前,3か月後,12か月後と検討した.F.variumの推移はreal-time PCR法にて確認した.大腸粘膜細菌叢の変化はDice-UPGMAクラスター解析にて検討した.また,各症例の症状・内視鏡所見をMayoスコアで評価して,ATM療法の有効性を評価した.さらに,ATM療法で寛解となり,12か月後まで寛解が維持された症例の粘膜からRNAを採取してメタゲノム解析も行った.【結果】TRFLPの変動はATM群12例中10例(83.3%)にみられたが,偽薬群では変動がみられなかった(0%)(p=0.0007).また,ATM療法の有効例でF.variumの減少がみられた.さらに,ATM群の有効例では治療後で有意に粘膜細菌層の変化がみられ,12か月後と長期に維持されていた.長期寛解例のメタゲノム解析ではBacteroidaceae,Acidaminococcus,Prevotella,Parabacteroidesなどが著明に減少し,12か月後まで持続されていた.【結語】ATM療法により治療前と比べ,粘膜細菌層でF.variumやBacteroidaceaeなどが減少し,かつ長期にわたりその減少が持続していることが,治療効果に反映されている可能性が示唆された. |
索引用語 |
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