セッション情報 ワークショップ7

バルーン内視鏡による消化器疾患診断と治療の到達点

タイトル W7-2:

バルーン内視鏡による内視鏡処置・治療の検討

演者 三井 啓吾(日本医科大学消化器内科学)
共同演者 江原 彰仁(日本医科大学消化器内科学), 坂本 長逸(日本医科大学消化器内科学)
抄録 【背景】バルーン内視鏡は,小腸疾患精査や内視鏡処置に広く使用されているが,実際施行されている内視鏡処置,治療の詳細や精度に関しては不明な点も多い.
【目的】バルーン内視鏡による処置の現状と効果・安全性について明らかにする.
【対象・方法】2003年6月から,当科でダブルバルーン内視鏡を施行した559症例953件で,内視鏡処置・治療の内訳,転帰・偶発症について遡及的に検討した.
【結果】953件のDBEのうち800件(84%)で内視鏡処置が行われた.内訳は,点墨469件(49%),生検312件(33%),消化管造影259件(27%),クリッピング88件(9%)(内,止血クリップ53件(6%),マーキングクリップ27件(3%),縫縮クリップ8件(1%)),バルーン拡張術31件(3%),ポリープ切除29件(3%)(内,polypectomy 21件(2%),EMR 8件(1%)),異物回収15件(2%),ERCP 43件(5%),ENBD 23件(2%),EPBD(EPLBD含む)17件(2%),EST 8件(1%),その他(消化管STENT留置,腸重積整復,膵液瘻孔の内瘻化など)5件(1%)であった.内視鏡処置による偶発症としては,生検では7例で追加治療を要する出血を来たし,6例で内視鏡的止血術を,1例で経カテーテル的動脈塞栓術を必要とした.7例中5例はGISTの症例であった.クリッピングでは1例で腹腔内遊離ガス像を認めたが保存的に軽快した.小腸血管性病変に対するAPCによる止血術は,27症例に32件に施行され,5例(19%)で再出血が認められた.ポリープ切除では,後出血を1例認めたが保存的に止血された.ERCP関連手技では誤嚥性肺炎を初期の2例認めたが,検査体位を腹臥位としてからは発生していない.また,内視鏡処置に伴う偶発症は認めなかった.
【結論】焼灼による止血術で再治療が必要とされる症例があり,治療手技の改善が必要と考えられた.バルーン内視鏡により,深部小腸や術後腸管へのアプローチが容易となり,小腸病変の診断・治療や術後偶発症への対応などの多彩な消化器疾患の病態に,安全で低侵襲な治療介入が可能であった.
索引用語