セッション情報 ワークショップ7

バルーン内視鏡による消化器疾患診断と治療の到達点

タイトル W7-6:

ダブルバルーン内視鏡による小腸腫瘍に対する生検診断の位置づけ

演者 井川 敦(広島大学病院内視鏡診療科)
共同演者 岡 志郎(広島大学病院内視鏡診療科), 茶山 一彰(広島大学病院内視鏡診療科)
抄録 【目的】これまで小腸腫瘍に対するダブルバルーン内視鏡(DBE)下生検診断能に関する報告はほとんどない.今回我々は小腸腫瘍診断におけるDBE下生検診断の位置づけを明らかにする.【方法】当科で2003年8月~2013年8月にDBE下に生検を施行した局在性小腸腫瘍(follicular lymphomaは除く)57例80病変(男性39例,女性18例,平均年齢62.6歳)を対象とした.これらについて,検査動機,病変の種類,病変到達率と各腫瘍別の生検診断率,生検に伴う偶発症を検討した.DBEはFujifilm社製EN-450P5/T5,生検鉗子はBF1824SF/BF2424SF,全例CO2送気を用いた.生検は1病変に対し原則2カ所以上施行し,悪性リンパ腫(ML)が疑われる場合には免疫染色を追加した.【結果】検査動機はOGIB 20例(35%),他疾患の小腸精査15例(26%),画像検査(CTなど)異常13例(22%),腹部症状精査9例(15%),低蛋白血症精査1例(2%)であった.小腸腫瘍の内訳は,癌12病変,ML 41病変(MALT 16病変,DLBCL 18病変,TCL 5病変,MCL 2病変),間葉系腫瘍13病変(GIST 11病変,平滑筋肉腫2病変),カルチノイド9病変,転移性腫瘍4病変,腺腫1病変であった.病変到達率は100%であり,生検診断率は全体で79%(63/80)であった.腫瘍別の生検診断率は,癌92%(11/12),ML 80%(33/41)(MALT 94%,DLBCL 67%,TCL 100%,MCL 50%),間葉系腫瘍43%(6/14),カルチノイド100%(9/9),転移性腫瘍75%(3/4),腺腫100%(1/1)であった.生検で診断ができなかった17例は,内視鏡所見(EUSを含む)とCTなどの画像所見から全て腫瘍と診断し,16例に外科的切除,1例(転移性腫瘍)は経過観察とした.生検に伴う偶発症は1例も認めなかった.【結論】局在性小腸腫瘍は,全例安全にDBE下生検が施行可能であった.しかし,間葉系腫瘍やMLの一部では生検診断率が低く,生検陰性例では内視鏡所見や他のmodality所見,臨床経過より総合的に診断する必要がある.
索引用語