セッション情報 ワークショップ8

B型肝炎抗ウイルス療法の進歩と課題

タイトル W8-1:

B型肝炎キャリアの長期予後―核酸アナログ服用例,非服用例での検討―

演者 多田 俊史(大垣市民病院消化器内科)
共同演者 熊田 卓(大垣市民病院消化器内科), 豊田 秀徳(大垣市民病院消化器内科)
抄録 【目的】B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアに対して核酸アナログ(NA)が出現し,10年以上が経過した.NAの投与により肝発癌は明らかに低下したが,B型肝炎の長期の生命予後に対する成績は明らかとなっていない.今回われわれはNA治療介入の生命予後に対するインパクトを検討した.【方法】対象は1991年から2010年までに経験したHBVキャリア2220例中3年以上経過観察し,発癌例では1年以降に発癌例した919例である.NA治療介入例(1年以上)は187例,非介入例は732例である.これらの肝癌関連死亡,肝疾患関連死亡,全死亡について検討した.また,propensity score matching法を用いて背景を合わせNAの介入の有無による生存率を比較した.【成績】経過観察中の死亡例は66例で,肝疾患関連死亡は37例59.6%,残りの29例43.9%は他病因死亡であった.肝疾患関連死亡の中で肝癌関連死亡が32例86.5%を占めた.また他病因死でも12例41.3%は他部位の癌による死亡であった.全症例で検討するとNA群,非NA群ともに肝癌関連死亡率,肝疾患関連死亡率,全死亡率で差を認めなかった.これは重症例にNAが投与されたためと考えられた.しかし年齢,性,HBVDNA量,HBe抗原の有無,血小板値,ALT値で補正すると,肝癌関連死亡率,肝疾患関連死亡率,全死亡率ですべてで非NA群に比しNA群は10年生存率,20年生存率で有意に良好であった(肝癌関連死亡率,P=0.0222,肝疾患関連死亡率,P=0.0132,全死亡率,P=0.0022).【結論】HBVキャリアに対するNA投与により長期の生命予後が明らかに改善した.そして,肝疾患関連死亡はほとんどが肝癌であった.一方40%強は肝疾患に関連しない死亡で中でも他部位の癌によるものが多く,経過観察する上で留意する必要がある.
索引用語