セッション情報 ワークショップ8

B型肝炎抗ウイルス療法の進歩と課題

タイトル W8-3:

核酸アナログ製剤不応例に対する新規治療の有用性

演者 鈴木 義之(虎の門病院肝臓センター)
共同演者 鈴木 文孝(虎の門病院肝臓センター), 熊田 博光(虎の門病院肝臓センター)
抄録 【目的】B型慢性肝疾患に対して核酸アナログ治療が広く使用されるようになり10年以上が経過し,その抗ウイルス効果の高さはだれもが認めるところである.しかしながら長期投与が原則である本薬剤投与中の症例の中には多剤耐性例や不応例が存在し,治療に難渋する症例が散見されるようになってきた.このような症例に対して新規治療薬であるテノホビル(TDF)を導入した症例の検討を行ったので報告する.【方法】2013年8月までに当院における核酸アナログ治療は,ラミブジン(LMV)初回投与1066例(このうちアデフォビル(ADV)併用例419例,エンテカビル(ETV)切り替え例308例),ETV初回投与例540例である.治療反応性が不良な例に対して28例TDFを投与しており,その臨床経過,ALT正常化率,HBV-DNA陰性化率,耐性ウイルスの変化につき検討した.【成績】(1)投与症例の背景は,男性19例(68%),年齢の中央値は54歳(35-65),投与期間は42週(18-264週)であり,肝硬変症例が2例含まれている.前治療はLMV+ADVが18例,ETV+ADVが4例,ETV単独が6例であった.ALT値は34IU/L(11-196)で,ウイルス学的背景はgenotypeCが26例で他はAとFが1例ずつであった.HBV-DNAは4.9log copy/mL(3.3-8.8)で,HBe抗原は23例に陽性であった.(2)TDF投与開始後の反応性は,6ヶ月後のALT正常化率82%(23/28),HBV-DNA陰性化率57%(16/28)であり,1年後はそれぞれ86%,78%と良好な成績を示した.HBV-DNAの陰性化に関わる因子の解析ではA181Tの有無,HBe抗原の陽性,他の耐性ウイルスの変異は関係なく,TDF開始時のHBV-DNAが5以上か否かが関係するのみであった.(3)耐性ウイルスの変異部位は,主なものを示すと,181が6例,202が2例,204が16例であった.耐性ウイルスの種類はETV9例,LMV7例,LMV+ADV4例,LMV+ADV+ETV2例,ADV1例であった.【結論】多剤耐性ウイルスに対するTDF併用療法の抗ウイルス効果は良好であった.今後のさらなる検討は必要であるもののTDFは本疾患に対する核酸アナログ治療抵抗例に対する新たな選択肢となりえることが示された.
索引用語