セッション情報 ワークショップ8

B型肝炎抗ウイルス療法の進歩と課題

タイトル W8-4:

核酸アナログ療法の有効性に関わるウイルス因子,宿主因子の検討

演者 鈴木 雄一朗(山梨大学医学部第一内科)
共同演者 坂本 穣(山梨大学医学部第一内科), 榎本 信幸(山梨大学医学部第一内科)
抄録 【目的】B型肝炎抗ウイルス治療は核酸アナログ製剤の進歩やPeg-IFN治療の出現によりHBV-DNA陰性化を目指す治療から,HBs抗原消失を見越した治療戦略が必要となってきている.今回B型肝炎核酸アナログ治療症例に各種ウイルスマーカーやIL28B SNPsから治療効果を検討した.【方法】当院にB型肝炎で来院した471例のうちHCV/HIVの重複感染や明らかな既往感染を除いた411例を対象とした.平均年齢:56.4歳,男性223例/女性188例,genotypeA/B/C/D:7/33/216/1.NA治療例は171例であった.【結果】NA治療例はLAM2例,LAM+ADV24例,ETV142例,ETV+ADV2例で治療期間は2年以内が18%,2年から3年14%,3年から5年24%,5年から10年38%,10年以上6%であった.HBV-DNA消失率は1年73%,2年86%,5年98%であった.HBsAg80IU/ml以下を満たす症例はNA投与年数と関連は認めなかったが,800IUml以下を満たす症例は1年39%,2年55%,5年62%と増加傾向にあった.HBcrAgについても3.0logIU/ml以下を満たす症例は年数と関連が無かったが,4.0logIU/mlを満たす症例は1年50%,2年50%,5年66%と増加した.NA内服中止時の低中リスクを満たす症例については投与期間で増加は認めなかった(2年未満:55.5%,5年以上:56.8%).IL28B SNPsはnonTTに男性とgenotypeCが多かった(男性:p=0.11,C:p=0.09).両者にHBsAg量やHBcrAg量の差は認めなかった.NA症例においてTTでは投与年数とHBsAgの低下に関連を認めなかったが,nonTTでは長期投与によりHBsAg80IU/ml以下を満たす症例が増加した(5年以上54%,5年未満7%:p=0.02).またLAM初回投与例のみで検討したところnonTTでは耐性ウイルス出現割合が増加した(TT:46%,nonTT:73%).【結論】NA長期投与により十分なHBsAgの減少やHBcrAgの減少は認めなかったが,IL28B nonTT症例ではHBsAgの減少を認めた.宿主因子がNA治療効果に関連する可能性が示唆された.
索引用語