セッション情報 ワークショップ8

B型肝炎抗ウイルス療法の進歩と課題

タイトル W8-6:

核酸アナログ投与症例におけるHBsAg低下に寄与する因子の検討

演者 森 奈美(広島赤十字・原爆病院消化器内科)
共同演者 柘植 雅貴(広島大学病院消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大学病院消化器・代謝内科)
抄録 【目的】近年,HBsAgの定量系の開発により,核酸アナログ(NAs)治療中にHBsAgが消失もしくは低下する症例が存在することが報告されている.本研究では,NAs長期投与によるHBsAg量低下に寄与する因子を検討した.【方法】対象は,当院及び関連施設においてNAsを6ヶ月以上投与した539例.平均年齢52歳,HBeAg陽性210例,エンテカビル373例/ラミブジン166例,平均投与期間50ヶ月だった.尚,本解析では,経過中HBsAg<200 IU/mlに低下した症例をHBsAg低下とし,4年間のNAs治療を行ってもHBsAg>1000 IU/mlの場合を低下不良とした.【結果】治療中にHBsAgが<200/<100/<10に低下したのは,128/88/44例.HBsAg消失を15例(2.8%)で認め,累積陰性化率は5年2.4%,10年5.4%だった.HBsAg低下に寄与する因子を単変量解析したところ,治療開始時eAg,sAg,ウイルス量,血小板数,NAs種類,治療期間が抽出された.次に,治療開始時のHBeAgの有無別に同様の検討を行った.HBeAg陽性例では,開始時HBsAg<250(OR 7.75,P=0.001),55歳以上(OR 3.09,P=0.02),HBeAg陰性化(OR 2.84,P=0.03)が,HBeAg陰性例では,開始時HBsAg<250(OR 19.9,P<0.001),NAs治療期間3年以上(OR 3.28,P=0.001),55歳以上(OR 2.26,P=0.01)が抽出された.一方,4年以上NAs投与した215例のうち,HBsAg低下不良例は151例(70.2%)であり,多変量解析にて54歳以下(OR 5.63,P=0.01),genotype C(OR 7.14,P=0.04),HBsAg>250(OR 8.44,P=0.003)の3項目が低下不良に寄与する因子として抽出された.【結論】HBsAg<250症例では,HBeAgの有無に関わらず,NAsの長期投与によるHBsAg低下が期待できる可能性が示唆された.一方,HBsAg高値の症例では,NAs単独治療によるHBsAgの低下は期待しがたいことから,インターフェロン併用などの治療工夫が必要と考えられた.
索引用語