セッション情報 ワークショップ8

B型肝炎抗ウイルス療法の進歩と課題

タイトル W8-9:

HBeAg陽性B型慢性肝炎に対する核酸アナログ/IFN sequential治療後の長期経過:特にHBsAg,HBcrAgの変化について

演者 榎本 大(大阪市立大大学院肝胆膵病態内科学)
共同演者 西口 修平(兵庫医科大学内科(肝・胆・膵科)), 河田 則文(大阪市立大大学院肝胆膵病態内科学)
抄録 【背景】我々は,HBeAg陽性B型慢性肝炎に対する核酸アナログ/IFN sequential治療の有用性と限界につき報告してきた.最近ではHBsAgの消失を目指したIFNの長期の有用性が見直されている.今回はsequential治療後の長期経過について追跡した.【方法】対象は2006年以前にsequential治療を導入したHBeAg陽性B型慢性肝炎24例(男性21例,37±11歳,IL28B TT/TG+GG 16/2,全例genotype C).ラミブジンを6ヶ月投与の後,1ヶ月IFNを併用して中止し,その後IFNを5ヶ月単独投与した.短期効果については治療終了6ヶ月のALT正常化,HBeAg陰性化,HBV DNA<104cps/mLをもって著効とした.その後,7.1±2.8年の長期経過を調査した.【成績】1)短期著効7例は非著効17例に比較して有意に若く(p=0.033),IFN開始時のHBeAg陰性化率が高く(p=0.085),HBV DNAが低値であった(p=0.020).2)エントリー時のHBsAgは3.7±0.6 log U/mL,HBcrAgは7.3±1.2 log U/mLであり,両者は有意に相関した(p=0.012,r=0.418).治療前,IFN開始時,IFN終了時,治療終了3~12カ月のHBsAgは,著効例と非著効例の間で差を認めなかった.HBcrAgについては,治療終了時(p=0.017),治療終了3~12カ月(p=0.033)において,著効例の方が有意に低かった.3)短期著効例のうち6/7(86%)は4.3±3.7年後もdrug freeを維持していた.非著効17例には5年以内にラミブジン再投与またはエンテカビルが導入され,うち9例には再びIFN sequential治療が行われた.4)核酸アナログのみで治療した8例よりIFNを使用した9例の方が,有意差はないもののエントリー時に比して直近のHBsAgの低下(-0.32 vs -1.4 log,p=0.10),HBcrAgの低下(-1.7 vs -3.2 log,p=0.12)が大きかった.【結論】1)Sequential治療によって著効が得られた症例の多くは,その後もdrug freeを維持していた.2)非著効でも,その後IFNを間欠的に使用することが,HBsAg,HBcrAgの低下に寄与する可能性が示唆された.
索引用語