セッション情報 ワークショップ8

B型肝炎抗ウイルス療法の進歩と課題

タイトル W8-10:

B型慢性肝炎核酸アナログ治療例におけるシーケンシャル療法の効果判定方法と予測因子の検討

演者 松本 晶博(信州大学消化器内科)
共同演者 梅村 武司(信州大学消化器内科), 田中 榮司(信州大学消化器内科)
抄録 【目的】B型慢性肝炎の核酸アナログ治療例における,シーケンシャル療法後の長期予後の判定方法と予測因子について検討した.【方法】対象は全国10施設にて核酸アナログ(NA)治療をうけた,B型慢性肝炎例58例(NA開始時34歳(21-57歳),男:女=48:12例,genotype B:C:ND=4:42:12例,NA投与期間中央値8ヶ月(4-121ヶ月),LMV:ETV=48:10例)であり,NA終了時にインターフェロン(IFN)を基本的に6ヶ月間投与した.その後のALT,HBV DNA量を経過観察した.【結果】NA中止後の再治療または最終経過観察までの期間の中央値は52ヶ月(4.9-98ヶ月)であった.NA治療開始時にHBeAg(-)であったのは29例(33%)であった.NA中止後の平均HBV DNA 4.0 LC/ml以下かつ平均ALT 30 IU/L以下を著効とすると,19例(33%)で著効が得られた.実臨床で用いるために平均の最大値への置き換えを試みた.ALTとHBV DNAの平均と最大値は良好な相関が得られ(r=0.821,0.861),平均に対応する最大値のcut offはALT 66 IU/L,HBV DNA 6.6 LC/mlであった.最大値を用いた平均の非著効予測はPPV 92%,NPV 73%,正診率85%であった.最大値を用いたNA-IFN切り替え後の再燃率は12ヶ月55%,36ヶ月75%であった.予測著行群と非著行群間で有意差の見られた項目はNA-IFN切替時のHBeAg(23 vs 56%,p=0.028),HBV DNA量(中央値2.1 vs 2.5 LC/ml,p=0.013),HBcrAg量(中央値3.1 vs 5.1 LU/ml,p=0.017)であった.多変量解析では切替時のHBcrAg量>3.7 LU/mlが再燃関連因子として抽出された(HR 4.5,95%CI 1.2-17.2,p=0.027).【考察】NA長期治療中の慢性B型肝炎例に対するシーケンシャル療法ではNA中止後の最大ALT 66 IU/L,最大HBV DNA量6.6 LC/mlをcut offとして用いると約85%の症例で長期予後予測が可能であった.著効を予測する因子としてNA-IFN切り替え時のHBcrAg量が有用である可能性が示唆された.
索引用語