セッション情報 |
ワークショップ9
NAFLD/NASHにおける新知見と治療法の進歩
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タイトル |
W9-1:非アルコール性脂肪肝炎における心血管イベントリスク因子である脂質異常の観点からの解析:多施設研究
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演者 |
今城 健人(横浜市立大学医学部附属病院消化器内科) |
共同演者 |
兵庫 秀幸(広島大学病院消化器代謝内科), 江口 有一郎(佐賀大学医学部肝疾患医療支援学講座肝疾患センター) |
抄録 |
【目的】非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の予後は心血管イベント発症により規定されうる.単純性脂肪肝(NAFL)に比し非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では心血管イベントによる死亡率が有意に増加することも報告された.しかしNASHの心血管イベント発症機序は解明されていない.我々は以前にNASHではNAFLに比しVLDL合成を律速するMTTP低下に伴う脂質プロファイルの変化により肝臓から放出されるVLDLが低下し,結果としてlarge VLDL(VLDL1)が増加することを報告した.ACCORD試験などの大規模臨床試験からも伺えるように心血管イベントと脂質異常の関係は総脂質の量よりも質に注目が集まっている.今回我々はNAFLD患者における脂質プロファイルに関して解析を行い心血管イベント危険因子との相関を検討した.【方法】当院及び佐賀大学で肝生検を施行したNAFLD患者145人を対象とした.またvalidation studyとして広島大学,高知大学のNAFLD患者69人を対象とした.リポ蛋白分画についてはPAGE法を用いて検討した.【成績】NASHではNAFLに比し血中VLDLの低下及びLDLの増加を認めた.Non-HDL-CはNASHで増加傾向があるものの有意差には至らなかった(p=0.07).small dense LDL(sdLDL)の値を反映するLDLの相対移動度(RM値)はNAFLに比しNASHで有意に増加していた.また,validation studyでも同様にRM値はNASHで高値であった.エゼチミブの投与によりRM値はNASH,NAFL共に有意に低下することが示された.【結論】VLDL1は血中でsdLDLを経て動脈硬化の危険因子である酸化LDLとなる.以上の知見と今回の結果よりNASHではNAFLに比べ有意に心血管イベント発症の危険因子となる脂質異常を伴うことが示唆された.即ちNASHでは肝臓に焦点を当てた治療に加え,心血管イベント予防のためにコレステロールの絶対量に加え質の改善を加味した治療が必要であることを示唆する. |
索引用語 |
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