セッション情報 ワークショップ9

NAFLD/NASHにおける新知見と治療法の進歩

タイトル W9-5:

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療に向けた最適な運動療法の探索

演者 呉 世昶(筑波大学体育系スポーツ医学)
共同演者 田中 喜代次(筑波大学体育系スポーツ医学), 正田 純一(筑波大学医学医療系医療科学)
抄録 【目的】NAFLDにおける運動療法は積極的に展開されておらず,また,現時点で,NAFLDに有用な運動療法の手法も確立されていない.米国スポーツ医学会ガイドラインでは肥満者の減量のために,週250分以上の中高強度の身体活動(MVPA)を推奨している.本研究では,NAFLDを有する日本人肥満者を対象に減量プログラムを実施し,MVPAの観点より,肥満とNAFLDの病態改善について検討した.【方法】減量教室(2011-2013)に参加した男性肥満者116名(年齢31-64,BMI 25-38)を対象とした.身体活動量計による3ヶ月間の記録データに基づき,MVPAを週250分以上(I)の参加者70名の介入前後における肥満とNAFLDの病態関連因子を解析した.また,週250分未満(II)の46名の結果と比較した.【成績】IとII群間の比較:介入前後差(*有意)の程度に差を認めた項目は,MVPA min/wk(424.4* vs. 201.3*),体重kg(-12.7* vs. -8.1*),腹部内臓脂肪面積cm2(-75.0* vs. -50.4*),腹部皮下脂肪面積cm2(-84.9* vs. -64.6*),VO2max ml/kg/min(+6.8* vs. +5.5*),空腹インスリンμU/mL(-5.4* vs. -3.1*),HOMA-IR(-1.49* vs. -0.83*),高感度CRP mg/L(-0.49* vs. -0.11*),leptin ng/mL(-4.6* vs. -3.1*),adiponectin μg/mL(+0.9* vs. +0.2*),TNFα pg/mL(-1.00* vs. +0.38*),CAPよる肝脂肪量dB/m(-84.9* vs. -64.6*)であった.体重減少の補正により,腹部内臓脂肪面積,高感度CRP,adiponectinが改善項目であった.MVPA増加と検査値の関係:体重減少の補正のもと,MVPA増加とVO2max(相関係数0.20),肝脂肪量(-0.23),adiponectin(0.32)の変化量は有意に相関した.【結論】週250分以上のMVPAの実践は,週250分未満に比較して,体重,身体組成,代謝機能,肝脂肪化を顕著に改善した.MVPAの増加は,体重減少とは独立して,NAFLDの病態関連因子を改善する効果を示した.NAFLDの運動療法には週250分以上のMVPAの実践を積極的に導入することが望ましい.
索引用語