セッション情報 ワークショップ9

NAFLD/NASHにおける新知見と治療法の進歩

タイトル W9-6:

カロテノイドによる自然免疫への作用とNASHの進展抑止

演者 太田 嗣人(金沢大学脳・肝インターフェースメディシン研究センター)
共同演者 Ni Yinhua(金沢大学脳・肝インターフェースメディシン研究センター), 金子 周一(金沢大大学院消化器内科)
抄録 【目的】肥満症や2型糖尿病に高頻度に合併するNASHは異所性脂肪蓄積やインスリン抵抗性を共通の病態基盤とする.しかし近年のRCTの成績では,インスリン抵抗性改善薬でさえ抗酸化剤に比べてNASHへの有効性は乏しい.一方,果物や野菜に豊富に含まれ,生体内血中濃度の高い主要なカロテノイドのうち,β-クリプトキサンチン(CX)はその血中濃度と肝疾患及びインスリン抵抗性の発症リスクと負の相関を示すことが近年の疫学研究から示されている.今回,消化管吸収が良く抗酸化力の強いカロテノイドであるCXのNASHモデルへの有効性と作用機構を検討した.【方法】7週齢のC57/BL6マウスに高コレステロール高脂肪食(CL),3mg/kgのCX混餌CL食(CL+CX)を12週間投与後,肝組織を摘出し,インスリン感受性評価,DNAマイクロアレイによる発現遺伝子解析,FACSによる免疫学的解析を行った.【成績】食餌負荷12週後のCL群は高インスリン血症,肝臓に脂肪化,炎症,線維化を生じ,インスリン抵抗性合併NASHモデルと考えられた.一方,CX投与群(CL+CX)における肝組織内のCX濃度は血中に比し7倍に増加し(P<0.001),消化管から吸収されたCXは他臓器に比し肝臓への蓄積が優位であった.CX投与により,CL群の肝臓における過酸化脂質の蓄積と炎症,線維化は減少し,インスリンシグナルの亢進およびJNK/p38MAPK,NFκB等の炎症・ストレス応答の減弱を伴っていた.CXにより脂肪酸酸化遺伝子群の発現は軽度に増加する一方,抗原提示及びマクロファージ活性化に関わる自然免疫遺伝子群の協調的な発現抑制が顕著であった.さらにFACSを用いた定量的解析から,CXによりマクロファージ総数の減少のみならず炎症抑制性M2マクロファージ数の増加を認める一方で,T細胞系の細胞数の有意な変化は認められなかった.【結論】CXは肝臓マクロファージ/Kupffer細胞の極性をM2優位に変換させるという自然免疫への直接作用を介し,NASHを抑制する新たなNutraceuticalとして期待される.
索引用語