セッション情報 |
ワークショップ9
NAFLD/NASHにおける新知見と治療法の進歩
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タイトル |
W9-7:NASHおよびNASH発癌における腸内細菌の役割
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演者 |
三浦 光一(秋田大学消化器内科) |
共同演者 |
大嶋 重敏(秋田大学消化器内科), 大西 洋英(秋田大学消化器内科) |
抄録 |
【目的】メタボリック症候群では腸内細菌叢に変化を生じ,それらに由来する有害および有益物質のバランスが崩れるとされる.一方,NASHでも腸内細菌叢が肝障害を助長するとされているが,詳細な解析はまだない.さらに,肝障害が腸内細菌叢に与える影響は不明である.今回は,NASHおよびNASH発癌において,まず肝障害における腸内細菌叢を検討し,次に腸内細菌叢への介入がそれら病態を改善するか検討した.【方法】NASH発癌モデルである肝細胞特異的PTEN KOマウス(以下KO)およびコントロールであるPTEN F/F(以下F/F)を用い,さらにPTEN KOとTLR4KOとのdouble KOマウスを作製した.また腸内細菌はT-RFLP法により解析した.まず,肝障害が腸内細菌への影響を検討するためF/FとKOマウスでの腸内細菌と血液中LPSレベルを比較した.次にKOマウスに抗生剤を投与し,腸内細菌の変化とNASHおよび発癌の程度を評価した.【成績】48週齢F/Fマウス(肝は正常)とKOマウス(肝はNASHと腫瘍出現)から採取した糞便はグラム陰性菌群であるBacteroidetes門とグラム陽性菌群であるFirmicutes門が大半を占め,野生型マウスで報告されている腸内細菌叢と一致した.また少なくとも門レベルでは両者に優位な相違は認めなかった.しかしKOマウスでは血液中のLPSレベルが高く,腸内透過性亢進が示唆された.LPSの役割検討のため,PTEN-TLR4 double KOマウスを作製したところ,NASHが軽減し,48週齢,72週齢ともに肝腫瘍の数や大きさが抑制された.次に抗生剤投与による腸内細菌叢への介入を試みた.抗生剤投与群ではgerm freeマウスと同様に虫垂の腫大を認め,糞便から回収されるbacterial DNAは非投与群に比べ,約1/10に減少していた.腸内細菌の解析ではBacteroidetesが相対的に減少し,Firmicutesが相対的に増加した.またプロバイオティクスに多く用いられるLactobacillus属の相対的増加が認められた.抗生剤投与KOマウスではNASHの軽減と肝腫瘍の成長が抑制された.【結論】NASHおよびNASH発癌には腸内細菌の量的および質的関与が示唆された. |
索引用語 |
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