セッション情報 |
ワークショップ9
NAFLD/NASHにおける新知見と治療法の進歩
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タイトル |
W9-9:メタボリックシンドロームモデルKK-Ayマウスにおけるアミノ酸による免疫代謝調節
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演者 |
池嶋 健一(順天堂大学消化器内科) |
共同演者 |
高嶋 志在(順天堂大学消化器内科), 渡辺 純夫(順天堂大学消化器内科) |
抄録 |
【背景】メタボリックシンドローム(MetS)に伴うNASHに対する薬物治療は未だ確立していない.私たちはアミノ酸のグリシンがMetSモデルKK-Ayマウスの脂肪性肝炎発症・進展を抑制することを見出し,その背景に肝マクロファージ(Kupffer細胞)活性化抑制を主体とした肝内免疫調節作用が関与していることを明らかにしてきた.そこで今回は本モデルにおけるグリシンの耐糖能異常に対する作用について検討を加えた.【方法】雄性8週齢KK-AyおよびC57Bl/6マウスに5%グリシン含有配合飼料ないしコントロール飼料を2週摂餌させた後にブドウ糖(2g/kgBW)を腹腔内投与して糖負荷試験(IPGTT)を施行した.血中インスリン値はELISA法で測定した.【結果】KK-Ayマウスではコントロール食群で顕著な体重増加がみられたが,グリシン摂餌群では摂餌量がほぼ同等にかかわらず体重増加が有意に抑制された.2週摂餌後の血糖値は糖負荷前値とインスリン値は共にC57Bl/6に対しKK-Ayでは高値であったが,コントロール群に比しグリシン群では有意に低値を示した.C57Bl/6では糖負荷30分をピークに血糖値は上昇しその後低下したが,KK-Ayのコントロール食群では120分に渡り高血糖が持続した.グリシン投与KK-Ayでは糖負荷30分後の血糖値上昇がコントロール食群に比し抑制されたが,120分後にかけての血糖低下はみられなかった.また,負荷後のインスリン値もグリシン投与群の方が低値傾向で推移した.【結論】グリシンはMetSの根幹を形成するインスリン抵抗性を含む耐糖能異常に対しても改善効果を有することが明らかになった.そのメカニズムとしてはKupffer細胞のTNFα産生抑制を主体とした肝内免疫環境調節による肝臓の糖代謝機能改善が寄与していると考えられた.グリシンはNASH治療のみならず消化管・肝臓基軸をターゲットとしたMetS予防・治療アプローチとしても有用であることが示唆された. |
索引用語 |
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