セッション情報 ワークショップ9

NAFLD/NASHにおける新知見と治療法の進歩

タイトル W9-10:

NAFLD進展および発癌におけるCCAAT/enhancer-binding protein homologous protein(CHOP)の関与

演者 鳥口 寛(京都大学肝胆膵・移植外科)
共同演者 波多野 悦朗(京都大学肝胆膵・移植外科), 上本 伸二(京都大学肝胆膵・移植外科)
抄録 【目的】脂肪肝から脂肪性肝炎,肝硬変,肝癌へと進展する機序は未だ明らかでないことから,小胞体ストレス応答性アポトーシス誘導因子であるCCAAT/enhancer-binding protein homologous protein(CHOP)のNAFLD進展における関与を検討した.【方法】CHOP knock out(KO)マウスを用い,methionine-choline deficient(MCD)dietを投与して脂肪性肝炎モデルを作成し,野生型マウス(WT)と比較検討した.また,diethylnitrosamine(DEN)とMCD dietを用いて,肝癌モデルを作成し,WTと比較検討した.さらに,非B型非C型非アルコール性のヒト肝癌切除標本を用いてCHOPの発現を検討した.【結果】MCD diet投与による脂肪性変化に関してはWTマウスとCHOP KOマウスの間に差を認めなかったが,炎症や線維化への進展はCHOP KOマウスにおいて抑制された.また,肝発癌ではCHOP KOマウスにおいて腫瘍発生数,腫瘍径,腫瘍増殖能が抑制された.MCD dietを投与したCHOP KOマウスの肝組織ではWTマウスに比べて抗アポトーシス蛋白であるBcl-2の発現が上昇しており,抑制のメカニズムとしてBcl-2の関与が示唆された.ヒト肝組織において,非腫瘍部背景肝が正常肝,脂肪肝からNASH,肝硬変へと進展するにつれ,CHOPの発現が有意に上昇し,それにともなってBcl-2の発現が抑制されていた.また,NAFLD activity score(NAS)が上昇するにつれ,CHOPの発現が上昇し,Bcl-2の発現が抑制されていた.METAVIR scoring systemにしたがって線維化を評価すると,線維化の増悪に従ってCHOPの発現が上昇し,Bcl-2の発現が低下していた.【結論】CHOP KOマウスにおいて脂肪性変化は不変で,NAFLDからNASH,肝癌への進展が抑制されることが示された.さらに,ヒトNAFLDの進展にCHOPの関与が示唆された.以上の結果よりCHOPがNAFLD治療のターゲットとなる可能性が示唆された.
索引用語