セッション情報 ワークショップ9

NAFLD/NASHにおける新知見と治療法の進歩

タイトル W9-12:

NASHに対する肝移植成績と問題点

演者 調 憲(九州大学消化器・総合外科)
共同演者 池上 徹(九州大学消化器・総合外科), 前原 喜彦(九州大学消化器・総合外科)
抄録 【はじめに】NASHは米国の肝移植の原因疾患として急増し,第4位となった.今後我が国においてもNASHにより肝不全に至る症例が増加することが予測される.NASHに対する肝移植の問題点としてhigh BMI症例の周術期管理,移植後NASHの再発,移植後の心血管系のイベントなどがあげられる.そこでNASHに対する肝移植の成績と問題点を明らかにする目的で以下の検討を行った.【対象】2012年末までの成人間生体肝移植388例を対象とした.NASHに対する肝移植症例は17例(4.4%:臨床的,病理学的に検討を行い,NASHの診断を得たもの).【方法】1.NASH以外の症例との比較:NASH以外の成人間生体肝移植377例との成績比較,2.High BMI症例の成績:BMI 30kg/m2以上11症例の成績を解析した.3.移植後NASH再発:NASH再発を検討.4.遠隔期心血管系のイベントを検討した.【結果】1.NASH症例の背景因子は,平均年齢56歳,男女比=5:12,BMI(kg/m2)の平均は25.3でBMI25以上を8例(47%)に認めた.MELD Scoreは平均16.3であった.NASH 17例の移植後生存率は1,5,10年それぞれ,73.3%でその他の症例と有意差はなかった(p=0.3574).2.全症例のBMI 30kg/m2以上12例中の7例(58%)が術後早期に死亡し,うち死亡例中2例がNASH症例であった.3.3例(17%)に移植後NASHの再発を認めたものの,再発危険因子は明らかでなく,食事指導を中心に管理中である.4.遠隔期の心血管イベントを認めなかった.【まとめ】NASHに対する生体肝移植の成績は他の移植例と同等であった.High BMI症例については成績不良のためBMI 30kg/m2以上は禁忌とし,減量後肝移植を施行している.NASH再発を17%に認めた.NASH肝不全例に対する肝移植成績は他の疾患と遜色なく,移植適応となりうる.High BMI症例,移植後のNASH再発に対する対策が今後の検討課題である.
索引用語