セッション情報 ワークショップ10

プロテアーゼ阻害剤の知見と問題点

タイトル W10-9:

C型慢性肝炎におけるNS3とNS5A領域の薬剤耐性変異とペグインターフェロンα2b・リバビリン・テラプレビル併用療法の効果について

演者 林 和彦(名古屋大学消化器内科)
共同演者 石上 雅敏(名古屋大学消化器内科), 後藤 秀実(名古屋大学消化器内科)
抄録 【目的】genotype1bかつ高ウイルス量のC型慢性肝炎に対する標準治療法はペグインターフェロン・リバビリン・NS3プロテアーゼ阻害剤の3剤併用療法であるが,新たにインターフェロン(IFN)フリーのNS5A阻害剤(Asunaprevir)とNS3プロテアーゼ阻害剤(Asunaprevir)の経口2剤法が開発されている.IFNフリーは従来のIFNプロトコールと比べ多くの利点があるが,NS3の変異(Q80L,S122G),NS5Aの変異(Y93H)など薬剤耐性変異に対して効果が低いと報告されている.今回自然発生している薬剤耐性変異の頻度とペグインターフェロンα2b・リバビリン・テラプレビル(PegIFN+R+T)の効果について解析した.【方法】PegIFN+R+T併用療法施行されたC型慢性肝炎50例.男29例,女21例,平均52.4±11.6歳であった.治療前にNS3とNS5A領域をダイレクトシークエンスで解析した.【結果】NS3領域の耐性変異は,V36I(n=1),T54S(n=2),Q80K(n=1),Q80R(n=1),S122G(n=5),S122T(n=2),S122N(n=1)S138L(n=1)の16変異,合計13例に認め,投与前の頻度は26%であった.NS5Aに関してはL31M(n=4),Q54H(n=10),Q54K(n=1),Q54L(n=1),Q54P(n=1),Q62A(n=2),Y93H(n=3)と合計18症例に21変異を認め42%であった.3例にNS3とNS5A両方に変異を有した.NS3,NS5A変異とcore70,ISDR,IL28Bに相関はなかった.36例がSVRとなり72%であり,NS3,NS5A変異の有無でSVRに差はなかった.またNS3とNS5Aに変異を持つ3例中2例がSVRであった.耐性の一番強いS122GとY93Hの変異症例はなく,この2重変異へのPegIFN+R+Tの効果は確認できなかった.【結論】自然発生しているNS3とNS5A領域の薬剤耐性変異に対してPegIFN+R+Tは有効であり,IFN不適応例以外の薬剤耐性変異症例の治療選択肢となりうる.
索引用語