セッション情報 ワークショップ10

プロテアーゼ阻害剤の知見と問題点

タイトル W10-12:

Deep sequencingによるNS5A阻害剤耐性変異の検討

演者 前川 伸哉(山梨大学内科学第一講座)
共同演者 三浦 美香(山梨大学内科学第一講座), 榎本 信幸(山梨大学内科学第一講座)
抄録 【目的】NS5A阻害剤daclatasvirはgenotype 1bHCVに対する効果が優れ,本邦で行われたプロテアーゼ阻害剤との併用臨床試験では高率にSVRを達成することが報告されている.一方,治療効果を規定するNS5A-Y93Hなどの耐性変異がどのような症例で生じやすいのか明らかとはされていない.本研究ではdaclatasvir未投与症例における耐性変異の臨床意義を明らかにするためにdeep sequenceを導入して検討を行った.【方法】HCV持続感染者110症例(Genotype 1b;PEG-RBV naive 59症例,再燃30例,PEG-RBV null 21例)について,Roche GS Juniorを用いてNS5A領域31,32,93番をふくむ領域のdeep sequenceを行い,臨床的な宿主因子・ウイルス因子との関連を検討した.【成績】Deep sequenceにてY93H変異をnaive 21/59症例(36%),再燃10/30症例(33%),null 3/21症例(14%)に,L31M変異は,naive 8/59症例(14%),再燃4/30症例(13%),null 1/21症例(5%)に認めた.有意差は至らなかったものの,Y93H,L31M共にnull症例に比して,naive,再燃症例で変異が多い傾向であった.32番変異はいずれの群にも認めなかった.一方,PEG-RBV治療耐性と関連のあるIL28B SNP TG/GG(p=0.002),core 70Q(p=0.029),IRRDR5以上(p=0.013)症例において有意Y93野生型が多く,多変量解析にてY93野生型と関連のある独立因子はIL28B SNP TG/GG(p=0.0042),であった.【結語】Deep sequencingによりdaclatasvir未治療症例においてNS5A耐性変異L31M,Y93Hのうち特にY93Hを高頻度に認めた.興味深いことに臨床的に問題となるY93HはIL28BSNPと有意に関連し,インターフェロン効果の高いIL28BTT症例において,臨床的なdaclatasvir耐性HCVの出現により留意すべき可能性が示唆された.
索引用語