セッション情報 ワークショップ11

高齢者総胆管結石の管理と治療の問題点

タイトル W11-1:

高齢者の総胆管結石における当科の緊急内視鏡治療の現状

演者 磯野 朱里(帝京大学内科)
共同演者 石井 太郎(帝京大学内科), 滝川 一(帝京大学内科)
抄録 背景:胆道疾患は急速に重篤になるため早期の適切な治療が必要である.当科では高齢者でも総胆管結石症に対して積極的に内視鏡処置を行っている.当科における高齢者総胆管結石に対する緊急内視鏡の現状について検討した.方法:2004年1月から2013年8月に当科施行のERCP1853例の中で,緊急ERCP(診断後24時間以内に施行)を施行した532例のうち,総胆管結石と診断された324例(男187例,女137例,平均年齢70歳)について背景,処置,合併症,胆嚢結石の有無について検討した.結果:65歳以上の高齢者は239例(74%)で,前期高齢者97例(30%),後期高齢者96例(30%),超高齢者46例(14%)であった.65歳未満の非高齢者は85例(26%)であった.抗血栓薬は高齢者で73例(31%),非高齢者で9例(11%)服用しており,高齢者で多かった(p<0.001).緊急ERCP時のドレナージは,ENBD287例(89%),EBD4例,カニュレーション不可例26例であった.ENBDは高齢者で208例(87%),非高齢者で79例(93%)と両者で差はなかった(p=0.167).乳頭処置は高齢者で28例,非高齢者で23例に施行されていた.カニュレーション不可例は高齢者で22例(9%),非高齢者で4例(5%)であり差はなかった(p=0.247).緊急時における総胆管結石除石は高齢者で13例(4%),非高齢者で13例(15%)であり,非高齢者で多かった(p=0.009).ERCP施行中合併症は高齢者では2例認め,出血と過鎮静であったが,非高齢者では認めなかった.ERCP後合併症は,高齢者で17例(肺炎8例,膵炎6例,他3例),非高齢者で膵炎2例であり,いずれも重篤とはならなかった.胆嚢結石合併は高齢者で147例(62%),非高齢者で66例(78%)認めた.胆嚢摘出術を施行したのは,高齢者で53例(36%),非高齢者38例(58%)と高齢者で少なかった(p=0.004).結論:総胆管結石に対する緊急ERCPは高齢者に多かったが,重篤な合併症はなく,安全に施行できていた.胆嚢摘出術は高齢者では希望しない例も多くみられた.
索引用語